プレゼント

２月１８日　晴れ

久しぶりにこの世界に飛ばされて来た。
ん～、今は何年なのかねぇ。
おっと、あそこに妙な人だかりがあるじゃん。
ちょっと覗いてみるかな。
…花屋の前に…、旦那？！
封炎剣肩に担いで、仏頂面で花を眺めてる？？？
俺様、ちょっと信じらんないもん見ちゃったって感じ？
半径５メートル、誰もいないじゃん…。

２月２６日　曇り午後雷雨

そーいや、ここんとこ飛ばされないよなぁ…。
そろそろ夕飯の買い出しに行くか。
お、あの後ろ姿は、旦那？
前もここで見かけたような…。
「だ…」
声を掛けようと思った矢先、旦那がケーキ屋に入るのを目撃。
…旦那に、ケーキ？？？　酒とかなら想像つくけど。
あれれ、店員さん、引いちゃってるよ…。可哀相に。
「ごごごごご注文はお決まりでしょうか」
「…ふん」
あ～りゃりゃ、営業妨害だね、こりゃ。お客が入って来ないじゃん。

３月８日　晴れ時々曇り

色々と買いだめしたのに、あれからすぐにルネッサンス時代に飛ばされた。
漸くここに戻ってきたよ、俺様。
でも、向こうじゃ、たったの２，３日だったのに、もう１週間以上経ってるなんてね。
旦那じゃないけど、やれやれだよ、本当。
さすがにもう食えそうな物ないなぁ。また買い出しに行くか。
「あれま、旦那。こんなとこで会うなんざ、奇遇だねぇ」
てか、ここで会うの、３回目なんだけどね。
「…テメェか」
店から出てきた旦那とばったり遭遇。ホント、ここでは縁があるんだよなぁ。
お、今日はまともな店…と思ったら、高級宝飾店…。
もっとこう、旦那にゃ鋼！とか鎖！とかそんなイメージのが強いんだけどねぇ。
「なに、旦那ってば、そーゆーの好きなの？！」
って言ったら殴られた。どーして怒るのよ。
「テメェ…。……いや、何でもねェ」
珍しい～～～。旦那が言いかけて止めるなんて。
もう一回殴られた。素直な俺様のお口にチャック。
そのまま旦那は去って行った。何だったんだろうね、一体。

３月１３日　曇り風強し

あ～、腹減ったなぁ。作るのもかったるいし、何か食いに行こう。
まだ朝も早いから人通りはちらほらだし。
と思ったら、え、旦那？？
背後からいきなり肩を掴まれて何かと思ったら。
「おい、ちょっと付き合え」
そのまま引きずっていかれた。
「だ、旦那～、俺様の朝飯～～～～」
「煩ぇ、後で食わしてやる」
それから一日中、旦那の買い物に付き合わされ…ってか、俺様荷物持ち？！
あ～、腹の虫がセンチメンタル通り越してストライキ起こしそうだぜ。
それもまぁ、買うわ買うわ。
洋服にアクセサリーにケーキに花に………。
あれれ、これって、前に見かけたあれと重なってる？
実は意外に金回りのイイ旦那。何気に高価な物とか平気で買っちゃうあたり…。
賞金稼ぎって、案外儲かるのかねぇ…。まぁ、旦那は酒飲む位で、金使わないんだろうけどさ。
で、漸くごっそりと買い込んで。
「テメェの部屋は？」
と来たもんだ。
「お、俺様の部屋に泊まるんスか？　そ、そんなぁ…俺様恥ずかしい」
ったら後頭部を思いっきりどつかれた。つまんない冗談は命ケズリます、はい。
で、結局俺様ソファーなのね。夕飯は奢ってくれたけど…。
何か、釈然としないぜ～～～～。

３月１４日

夜も明け切らぬうち、いきなり旦那に叩き起こされる。
「それ持ってついて来い」
え～～～～、と思い切り不満を口にした俺様を睨み付けた旦那の目、マジだったわ。
仕方なく、昨日の大荷物を抱えて、よっこらよっこら付いて行った。
夜明け前の誰もいない道を旦那と二人で歩く…あんまりロマンチックじゃないね～。
しかも、向かう先が「悪魔の棲む地」ときたら…。
…！　な～るほど、そーゆーことな訳ね。
で、太陽が昇り始める頃、俺様達は一軒の小屋の前にいた。
「…よし、帰っていいぞ」
そんなぁ、ここまで来たのに。メシぐらい食わせてくれたって。
「…あと３時間したら来い」
おやおやぁ～？　それって、もしかして…。
「…死にてぇのか？」
「はいっ、帰ります」
俺様はダッシュで逃げた………と見せかけて。
こっそりと引き返して、扉に耳を押し当てる。
この重労働に対して、これぐらいしてもバチは当たらないよな？

「あ～、ソル、お帰りぃ」
おぉ、起き抜けのふにゃふにゃしたテスちゃんの声が聞こえてくるじゃん。
「あぁ…」
「…何、この荷物？　ソルの？」
「…お前に、やる」
「え…？！　何で？　今日私の誕生日でもないし…」
「…この間の、お返しだ」
「この間って…？」
寝起き悪いのかな～。どうも頭が回転してないよ、テスちゃん。
「あ…！　そっかぁ。うん、わざわざありがとうね、ソル」
気配からして、熱～～～～いチュウでもしてる感じ。
………あぁ、この先は（現在）独り者の俺様にはツラ過ぎる…。
やっぱ、後３時間したら来よう。
きっと、テスちゃんのオイシイ手料理が食べられるよね…。

その２時間半後、ヘーアンジダイの日本にいた俺様でした。
あぁ、俺様の朝飯は…。チクショーーーーーーー！！！！！