「ＰＩＮＫ　ＢＡＴＨ」

私はテスタメント。悪魔の棲む地に、一人で暮らしている。
…筈だったのだが、今、ここで大変なことが起ころうとしている…。

「コラ！　またお前達は〜。こんなにどろんこになって」
テスタメントはバタバタと走り回る物をむんずと掴んだ。
「もう〜。ソルは少しも大人しくしてくれないんだから」
「…俺がどうしたって？」
背後から聞こえる低い声に振り向きもせず。
「ソルじゃなくて、こっちのソル。
どうしてこの子みたいに大人しくしててくれないのかなぁ」
些か意味不明なことを答える。
だが、住人達には何の事だか分かっているのだ。
「あ〜ぁ。お部屋が泥だらけ。お掃除しなきゃ。
ソル、ちょっとこの子達、お風呂に入れて来て」
ぽい、とソルの膝に放り出されたのは、一匹の猫と手乗りサイズの小さなソル。
猫は盛んにソルに威嚇を繰り返し、小さいソルは本体にケリを入れていた。
「・・・冗談じゃねぇぞ」
ソルは如何にも不本意そうに呟いた。
「だって、お部屋このままにはしておけないでしょ。
どうせ何もすることがないんだからいいじゃない」
台詞はすっかりどこかの奥さんの乗りである。
「・・・お前も一緒なら考えてやるぜ」
「もう、またそんなことばっかり言って…」
と口では言うものの、満更ではなさそうなテスタメント。
「いいだろ？」
自分を見つめる瞳の熱さに酔ってしまいそうだった。
「うん・・・分かった」
ぽっと頬を赤く染めて、小さくテスタメントは頷いた。
んにゃぁぁぁぁぁん
と、昼寝から目覚めた猫が大きく伸びをして起き上がった。
『あ、待って待って〜。ソルを何処に連れていくの？
私も一緒に行く〜』
みゃっみゃっ、と泣きながらソルにゃんを追い掛ける。
待って、とばかりにはっしとテスタメントのスカートにしがみついた。
「きゃっ…！　もう、お前は本当に甘えっ子なんだから。
しょうがないなぁ、じゃあ一緒にお風呂入ろうね」
テスタメントはテスにゃんを抱き上げた。
『お風呂なの？　嬉しいの〜♪』
『誰が風呂なんかに行くか〜〜、下ろせ〜、離せ〜！』
ちょこなんとテスタメントの腕に収まっているテスにゃんと対照的に、
ソルにゃんはソルに掴まれたままじたばたしていた。
元々ノラだけあって、お風呂なんて入ったのは、ここに来て初めてだった。
「喧しい、黙れ。往生際が悪ぃぜ」
手乗りソルはソルの肩に掴まって面白そうに見ている。
『やだ〜〜〜〜！！』
ガブッ！ソルにゃんはソルの鼻に思いっきり噛みついた。
「ってぇ〜〜〜〜〜〜！　このバカ猫がっ！」
「あっ、ソル、大丈夫？」
テスタメントが、そっと傷を舐めた。
「いや・・・まぁな・・・」
すぐに大人しくなったソル。
「ほら、お前もこっちおいで。大人しくして」
ひょい、とテスタメントはソルにゃんを抱っこした。
『ねぇ、ソル。一緒にお風呂入ろ？　ね、ね？』
テスタメントの胸に抱かれていたテスにゃんが愛らしい顔でそう言う。
『…まぁ、お前がそう言うなら…』
「あ、大人しくなった。…ほら、ソル、お風呂行こう」
「あぁ・・・」
二人と一人と二匹は、風呂場に消えた。

浴室は広い。浴槽も広い。
こういう風呂を和式と言うのだそうだ。
のんびりくつろげると言う意味ではこれに勝る物はない。
ざっと汚れを流し、浴槽に体を伸ばす。
猫たちとちびは洗面器がお風呂だった。
うりゃ、とちびソルがソルにゃんにお湯をかける。
嫌々入っていたソルにゃんは嫌がって飛び出す。
フーッ！と威嚇してちびソルに飛びついた。
フギャーッ、バタバタ…。
「あ〜、もう、どうしてお前達はこの子みたいに大人しくしててくれないの」
「いいじゃねぇか、ほっとけ…」
ソルはテスタメントの裸身を抱き寄せた。
白い肌から真珠のような湯が滑り落ちる。
「ソル・・・」
湯の中で二人の体が触れ合った。
近いようでいて、隔てられたもどかしさが、心地よくくすぐったい。
どちらからともなく、二人は唇を触れ合わせた。
・・・・・・
はっと気付けばちびソルにソルにゃんテスにゃんまでが、じっと二人を見つめている。
思わず赤面して離れる二人。
「…さて、躰洗うか」
その場をごまかすように言い、ソルは浴槽から上がった。
「あ、うん、そうだね…」
テスタメントも躰を起こす。
「おいで、ソル」
ダッと浴室の隅まで逃げたソルにゃんに手を伸ばす。
フッ、フーッ！と威嚇してみても、ソルにゃんはやっぱりテスタメントに逆らえなかった。
結局捕まえられて、洗面器のお風呂で洗われることになるソルにゃん。
ちびソルは、専用の小さなタオルの切れっ端を使って泡だらけになっていた。
「もう、ソルってば、こんなに硬くなっちゃって」
「・・・何？」
今、何気なく呟かれた言葉に、ソルは我が耳を疑った。
「え、だから、ソルが硬く・・・、あっ…！　うぅん、何でもないの！」
緊張して硬直しているソルにゃんのことを言ったつもりだったのだが、
テスタメントは自分が何を口にしたか気付いた。
湯当たり以外の熱で白い頬が忽ち赤くなる。
「な、何でもないったら…。ほら、早く洗ってあげてよ」
何か言いたそうな目つきで、ソルはテスタメントを見たが、それ以上は追求しなかった。
「さて、じゃ洗ってやるか」
ソルの足の間には、ちょんとテスにゃんが収まった洗面器があった。
お行儀良く座ってソルを見上げている。
テスにゃんはお風呂が好きなので、誰が洗っても大人しい。
だが、ソルにゃんはテスタメント以外−この場合ソル−が洗おうとすると、
猛烈に抵抗するので、いつもテスタメントと風呂に入ることになっていた。
「お前は大人しくていいよな、あのバカ猫と違ってよ」
ごしごしと洗ってやりながら言う。
けれど、今テスにゃんの興味は別の所にあった。
『何だろう、これ…。今日こそ触ってみようかな』
テスにゃんの可愛い手が、ちょい、とそれに触れた。
ゆらり、と物憂くそれは揺れた。
『にゃっ！　動いた、動いた♪』
更にちょいちょいちょいと手先でいじってみる。
「こら、テス、そんなトコいじるんじゃねぇ」
「え、何？」
テスタメントが振り向く。
視線の先では、きゃぁ♪きゃぁ♪とソルの股間をいじっている猫の姿。
「なっ…！　何やってるの、お前は！」
慌ててテスタメントはテスにゃんをソコから引き剥がした。
『やぁ〜なの、もっと遊ぶの〜〜〜〜』
ぱたぱたと愛らしくテスにゃんは駄々をこねた。
「ダメ、ここは…」
「ココはままの物なんだとよ」
ぐい、とソルの腕がテスタメントを引き寄せた。
「あっ…、ソルったら…」
しっとりと濡れた素肌が触れ、心臓の鼓動が直に伝わってくる。
テスタメントは背後から抱きすくめられる形になっていた。
自然に躰がソルの膝に乗る。
「ソル・・・」
うっとりとその広い胸に躰を預け、テスタメントは目を閉じた。
頭上に束ね上げられた髪が黒々と蟠っている。
ソルは目の前の白い項に唇を這わせた。
「あんっ…！」
膝を掴む指の強さから、テスタメントが感じていることが分かる。
ソルの片手が胸の果実を摘む。
もう片方の手は股間に忍び入っていた。
「あっ、いやだってば、ソル・・・」
「…でも、ここは嫌がってねぇみてぇだぜ？」
明らかに湯ではないもので、そこは濡れ始めていた。
「だ、だって…。………ひっ…！」
いきなりテスタメントの躰が跳ね上がった。
「ん・・・？　どうしたんだよ…テス」
肌の上で動く唇の気配が、もどかしい快楽を産み出す。
が、まるで予期していなかった部分を刺激され、テスタメントの躰は否応なく反応してしまった。
「・・・こいつは・・・」
視線を動かすと、猫の姿があった。
可愛いテスにゃんは洗面器に入ってじっとこっちを見ている。
トラジマの猫が、テスタメントの足指をはぐはぐしていた。
「あっ、いや、やめて…！」
ソルの腕の中でテスタメントが身悶える。
束ねていた黒髪が解けて広がった。
「…ふ〜ん、お前、そんなとこも感じんだな」
ソルが、妙なところに感心した。
「なっ…何をバカな…、あぁんっ…、ソル、やぁっ…」
甘い喘ぎ声。
『ソルは何をしているのかな〜』と言う顔でテスにゃんは小首を傾げている。
『俺も混ぜろ』とばかりにちびソルはうんせ、とテスタメントの足を上る。
「あっ、あぁ…いや、そんな…」
ソルの指が二本、蜜に濡れた女に侵入する。
ちぃまいソルは、器用にソルの腕に座り、硬くなり始めた未成熟な男にしがみついた。
「いやぁっ、ダメ…っ！」
小さな口が、はぷはぷと先端に噛みつく。
ちいさな手指が柔らかくそれを揉み、擦り上げる。
猫は親指から人差し指へと移動していた。
「いや、いやっ…！」
テスタメントの全身が快楽に震える。
執拗に続く悦楽の波が、心を押し流していく。
めくるめく程の歓喜の渦の中で、テスタメントは幸福を思った。
胸に浮かぶのは、ただ一つの名、唯一つの面影。
ソル・・・暗黒に縛られた彼を焼き尽くした、激しい太陽。
「ソル・・・愛してる………！」
「…俺もだ」
覚えがないほど優しい声が答えるのが、遠くで聞こえたような気がした。
『まま、とっても苦しそうなの。…あ、ぱぱ乗っかった』
そして、総てが溶暗した。

その後、ソル×３は暫くテスタメントに構ってもらえなかった。
「嫌いっ！」
「…何だよ、お前だって上せるぐらい感じてたくせに」
ボスッ、とクッションがソルの顔面にクリーンヒットした。
「バカッ！　暫くこの子と一緒に寝るからね！」
みゃぅ〜〜。
テスタメントはテスにゃんと一緒に寝室に消えた。
「…ホントは喜んでたくせに、よ」
呟き、目線を下に向ける。
一人と一匹がじっとソルを見上げていた。
「…てめぇら、良くやったぜ」
この瞬間、男の友情が芽生えた。

〜Ｅｎｄ〜

下らない、と言えば下らない。
でも、幸せな話（笑）
いや〜、なかなか上手くできなくて、苦戦しました（苦笑）
何とかかんとか、久々の更新。
少しはコミカルに、と思ったんですけどね(^^;;;
まぁ、終わりよければ総てヨシとしましょう（笑）