どろどろとした溶岩のような熱い固まりが全身を包み、手足に絡みつく、飛び立とうともがくほどにそれは全身を捉え、離さない。執拗に纏いつき、足に腰に絡み、底知れぬ奈落に引きずり込もうとしている。やがてそれは冷えて固くなり、彼の全身を縛り付ける・・・。
目を覚ましたとき、朦朧とした意識の奥に先程の不安な夢が残って、未だに夢の中かと思った。が、頬にあたる固く冷たい感触から、急速に覚醒する。
「ここは・・・。そうか、私はまた…」
エンジェモンは俯せに寝かされていた。先程の石造りの部屋だ。視線の先に鉄格子と、先刻から置き忘れられたように、己の翼が一枚、無造作に投げ出してあった。
体が冷たい。そこで、エンジェモンは己が全裸であることに気づいた。そして、己が両手首を戒める冷たい鎖にも。手は頭上でまとめられていた。
「な・・・！ 何だ、これは…っ」
起きあがろうとすると、不自然な形で強張った筋肉が悲鳴を上げ、出血だけは止まった肩口の傷が激しく疼いた。鎖はこれ以上は余裕がない。両手を縛られているので、自然と肘と膝を使い、四這いの格好になった。
しかし、そこで、不意にエンジェモンの背にのしかかるものがあった。言わずとも、このようなことをするのは唯の一人、デビモンである。
いつからそこにいたのか、まるで気配を感じなかった。いや、いきなり加重されたことで、両膝が床に圧し付けられ、肘が砕ける。
よろめき、再び床に崩れそうになるところを、後ろからデビモンが腹部に手を回して支えた。
体が密着する。それが、思いもよらず暖かかったことで、エンジェモンは相手も全裸であることを知ったのである。
「良い格好だ、エンジェモン。私を誘っているのか？」
「誘う…？ 何を訳の分からぬことを。どけ、デビモン、これは一体何の真似だ！」
気丈なる言葉も、やや乱れ、叫びがちだった。何かは分からぬが、よからぬことが起こりそうな、そんな予感がエンジェモンにはあった。漠然とした不安、屈辱による怒り。それが、常に冷静な天使の感情を乱していたのかもしれない。
「大人しくしていろ。かつて、どのようなデジモンも味わったことのない快楽を味わわせてやろうというのだからな」
その一言に、背筋がぞっとするような恐怖が潜んでいた。彼らを産み出した人間達の記憶から生まれる、根元的な恐怖とでも言おうか。
その時、エンジェモンは腰の辺りに異様な感覚を覚えた。二人の重なり合った部分に、何か奇妙な物体がある。彼自身のものではない、一直線の棒のようなものだ。そのような形状のものは、エンジェモンの記憶になかった。
しかし、その熱く硬い、微かに脈動する物は何なのだ。それが、その見知らぬものこそが、彼の不安の源泉なのだ。不快、というのではない。ただ言いしれぬ焦燥を感じる。
必死に首を後ろにねじ向けようとするが、叶わなかった。背後からデビモンがしっかりと抑え込んでいるからだ。仮に首を回せたところで、見えるはずのない場所なのだが、とにかく、その何かわからぬものを目で見て、確かめたかったのだ。
不意に、生暖かいものが、首筋に押しつけられた。ぬるりとそこを這うのは、デビモンの舌だ。そして、肉に突き刺さるのはその牙だった。
「ア、アァッ…！」
体が小刻みに震え出す。自然、肩に力が入った。この背筋を滑り落ちる感覚は何なのだ。かつて経験したことのないものだ。次第に、その痺れるような感じは高まり、エンジェモンはその得体の知れぬことから逃れようと、体を前に逃がした。
だが、疲れた腕には二人分の重さを支える力がなく、腰だけを突き上げた無様な姿で、冷たい石の床に押さえつけられる格好になってしまった。胸から肩に掛けて鎖が食い込む。
「いやだ、やめろ…っ！」
拒否する声は既に悲鳴となっていた。腰に押し当てられた異様な物体は益々熱さを増しているようで、それがたまらなく恐ろしかった。
「まだ、駄目か？ では、これならどうだ」
聞く者を堕落させる甘やかに優しい声が、嬲るようにそう言うと、一気にデビモンは獲物の翼をもう一枚むしり取った。先程のと同じ側の、一番小さい翼だ。
最早声にならない叫びを喉の奥から迸らせる、エンジェモンの苦しみ悶える姿が、心地よかった。体の下で震え、痛みに硬直し、痙攣する、それが堪らなく彼をそそるのだ。
しかし、それだけでは済まなかった。
デビモンは背後から胸へと手を回した。長い爪を生やした指先が、その胸に埋め込まれた宝玉に触れると、先程とは明らかに違った様子で、エンジェモンの体が震えるのが分かった。
「ひ…っ、や、やめろ、・・・いやだ、…いや・・・」
拒絶する声に力がなくなっていく。白く滑らかな肌に血が上り、微かに色づいているのが艶めかしい。そして、真紅の血が。
その指が、宝玉にほんの少し触れるだけで、止めようもなく体が震えた。そうされるだけで体が熱くなり、目を眩ませるような何かが、腰の奥から沸き上がってくるようだった。
その波のような感覚に溺れまいと、必死に目を瞑り、首を振る。もう体が痛いのか痺れているのかも定かではなく、ただ、逃げなければという思いだけがあった。
彼の腕の中で、一際大きく獲物の体が痙攣した。それは、彼自身をも何かしら興奮させる動きだった。デビモンの体の内から突き上げるように高まる、荒々しい感情。この感情こそ、人間が欲情と呼ぶものであるのか、と納得する。このような激しく燃える情念ならば、人が身を誤るのも分かるような気がする。それは、どこか人を酩酊させる美酒に似た感情だった。
そしてここでデビモンは漸く、己が人間に似せて創造した器官を役立てる時が来たことを悟る。
「そうか、そういうことなのだな」
低い呟きは、エンジェモンの耳には届かなかったようだ。身内で暴れる炎を、何とか静めようと無駄なあがきを繰り返しているらしい。
長い手を伸ばし、デビモンは床に置かれた小さな瓶を取り上げた。そこには、どろりした半透明の糊状の液体が半ばまで詰められていた。
一瞬デビモンの責めが途絶えたことで、エンジェモンは胸の奥から大きく息を吐き出した。これで終わりかと思ったのである。何か恐ろしいことをされていたが、やっと解放されたのだと。
けれど、エンジェモンが終わったと思ったのは誤解だった。彼の敵はその中身を片手の指先ですくいあげると、いとも無造作にエンジェモンの局部に塗りだしたのである。
「何をする！」
そのようなところに触れられる不快感に、獲物は激しい拒否反応を起こした。石の床に擦れて、鎖が嫌な音を派手に立てる。
「大人しくしていろ、こうせねば更に苦しくなるのだ」
意地悪な含み笑い、邪悪な愉悦に彩られた声には、珍しく感情が見える。
「いや…、いやだ・・・！」
紛れのない恐怖。未知なる経験に対する純粋な、恐れ。
アンバランスな翼がもがき、白い羽根が宙に舞った。
だが、その恐れ拒む仕草こそがデビモンを誘うのだと、彼は知らなかった。
「ア、アアァァァァーッ!!」
絶叫。石の壁に、空しく跳ね返り、砕ける。
無慈悲にデビモンは腰を進めた。紛い物とは言え、それは人間の持つ物に近くなるよう、精巧に造られている。そこから得られる快楽も、また。
エンジェモンは自分に何が起こったのか分からなかった。熱い塊がそこに押しあてられたと思う間もなく、灼けるような痛みに、体を引き裂かれていた。そうとしか言いようがない。痛み、ただそれだけだった。何故、このようなことをされねばならないのか、これは、一体何なのか。
何も分からないうちにデビモンが動き始め、それに伴い灼熱する痛みが全身に広がっていく。強引に体を開かれる苦痛は、翼をもがれた時の比ではなかった。
「あ、あぁっ、アー…ッ！」
叫ぶ度、そこが収縮し、強くデビモンの「男」を締め付ける。痛いほどのそれも、今のデビモンには快楽でしかなかった。彼自身、初めての試みであったのだ。
動かすと内壁がひくひくと小刻みに痙攣する。その動きに合わせて快楽の波が彼を覆う。溺れていく、深く、その天使の内に。残酷な悦楽は、彼を恍惚とさせた。
元来、デジモンに生殖という概念はなく、従って生殖器官という物も存在していなかった。彼らはデータから生まれ、卵から成長する。そして消滅したら再びデータに戻るだけなのだ。
だが、より人間に近くなるために、そのデジモンの常識をうち破ったもの、それがデビモンなのだった。彼は人間を研究し、かつてどのデジモンも得たことのない感覚を得ようと考えた。
人間から生まれただけあって、デジモン達は睡眠欲も食欲もある。それだけで満足してしまうのが常だった。しかし、人間の三大本能の残る一つが欠けていることにデビモンは気づいたのだ。
性欲。人間のみならず、全ての動物が持っている生殖に基づく欲求。
それを手に入れれば、彼は普通のデジモン達に明らかに一線を画すことになる。
そうして、デビモンは人間の男の持つ生殖器官を自らの手で創り出したのである。
それのもたらす快楽は、今エンジェモンの中に強引に沈めたことにより、実証された。かつて感じたことのない欲と、快感。所有と支配、服従、限りない満足。
覚えず、デビモンの口から哄笑が上がった。
彼の純白の天使は、痛みと出血に耐えかね失神しているようだが、デビモンは構わず腰を使い、獲物を犯し続けた。
「私は、お前を手に入れたぞ、エンジェモンよ・・・」
聞く者とてない言葉。
ただ、石の壁が無表情に聞いているだけだった。
そして、黒い翼が白い翼を覆い隠す。一切を闇の中へと。
?? Not Continued. ??
H12.1.13 THU. 23:00 Ighia LIEHD
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昔の私、ナニを考えていた？って言うくらい、カットばしてマス。
でも、このカップリング、好きなんだよぉ〜。
白と黒の対立は永遠のテーマです（笑）
つーか、デビモン様のお声が…(*^^*)
強姦モノ…好きです。アクマや、自分…。
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