「星」

あの瞬く星よりも君の瞳は美しい
その瞳に僕という囚人を閉じこめておくれ
ずっと、ずっと・・・

「まま」
そう呼ばれることに、最近では慣れてしまった。
俺は、足元にすり寄ってくる猫を抱き上げた。
俺の腕の中でゴロゴロと満足そうに喉を鳴らしている。
その姿が可愛いと、何時しか思うようになっていた。
「ぱぱ…」
俺を見上げ、哀しそうな目でそう鳴いた。
確かに、夕飯時だというのに、あいつの姿が見えない。
あいつ＝「ぱぱ」＝ナデューのことだ。
こんな時間になっても戻ってこないのはおかしい。
仕方がない、探しに行ってやるか。
俺がそう呟くと、猫は嬉しそうに「まま」と鳴いた。

オレは、草原に横になって、ぼんやりと夜空を見上げていた。
ここリルダーナの夜空ってのは、アンヌンとはまるで違う。
星があって、月があって、キラキラチカチカ…。
でも、あんなに星があっても、一つもオレの手には入らねェ。
ガラじゃねェのは分かるが…。
今のオレは、何故かソレが悔しかった。
どうしたってンだ、全く。
今日のオレはどうかしてやがるゼ…。
そんなことを思いながら、オレはずっとそこで横になっていた。
…夜露が冷てぇな。そろそろ戻るか。

「ぱぱ！」
猫は一声叫ぶと、俺の腕の中から飛び出して行った。
「…おぅ、何だよ、クレイドル」
「…食事だ。帰るぞ」
あいつは、妙にぼんやりした顔で空を見上げていた。
「…どうした、帰らないのか」
ナデューは、頼りない顔で俺を見た。
珍しい。こんな表情を見せることなど、そうあることではない。
「…星が、キレイだよな」
「あぁ、そうだな。それがどうかしたのか？」
「…アレは、オレの手には、入らねェンだよな…」
俺はナデューの隣りに腰を下ろした。
「…夜空に星など要らん。・・・と以前の俺なら言っただろうが」
見上げた先には、無数の星の瞬き。
「…美しいな。こういう夜空も、悪くはないかもしれん」
にゃあ〜〜〜
猫も俺の気持ちに合わせたように鳴いた。

言われて、オレは隣のクレイドルを見た。
淡い星の光に照らされた横顔。
キレイだ。
「…あぁ、そうだな。
オマエの目は、どんな星よりもキレイだゼ」
「…ナデュー」
振り向いた瞳に、無数の星が煌めいていた。
これは、この星だけは、オレのモンだ。
「…クレイドル、…オレの、クレイドル」
「ナデュー…。何をいきなり・・・」
そう言いながら、クレイドルの腕がオレの背に回される。
オレタチは星空の下で、いつまでも抱き合っていた。

〜Ｅｎｄ〜