「狂い風の遊び」

時ならぬ、冬の狂い風。激しい雨も伴ったそれは、正に嵐と呼ぶべきだった。
吹き行く風が獣の遠吠えにも似た唸りを上げ、煩い程に雨戸を揺さぶる。
これでは、冬の嵐を肴にゆっくり飲むこともできないな、と左近は風流を通り過ぎた狂風に苦笑を浮かべる。
しかし、それでも晩酌を楽しんでいた左近の耳に、風雨のざわめきとは違う音が聞こえた。
物音のした方を見遣ると、襖が少しばかり開いている。その蔭から、小さな赤い髪が覗いていた。
「ん…？　どうした、三成」
「さこん…」
現在この城を預かっている左近が、養育していると言ってもいい三成少年は、左近の寝間の隣に起居しているのだ。
「風が、うるさくて、眠れぬ…」
気丈に言ってはいるが、その胸元に小さな枕をしっかり抱えていては、虚勢だとはっきりしていた。
「あぁ、そうだな。…おいで」
笑いながら手招きしてやると、三成は一瞬だけぱっと嬉しそうな笑顔を浮かべた。しかし、すぐにいつもの取り澄ました表情に戻って、まるで自分は怖くも何ともないのだと言う様に歩み寄ってくる。
三成は左近の枕と並べる様に自分の枕を置くと、この世で一番安心できる場所に陣取った。即ち、左近の胡座の上である。
ちょこなんと腰を下ろした少年の髪を左近の武骨な手が撫でてやる。明るい色をした髪は、滑らかにさらさらと左近の指の間をすり抜ける。
「怖いのかい？」
からかうように聞いてやると、怖くなどないと少年は怒った様に左近を睨み付ける。
一瞬後、凶猛な風が吠える様に吹き行くと、少年はびくりと躯を震わせ、左近の襟にしがみついてきた。小さな躯が細かく震えている。
幾ら気丈とはいえ、まだ十の子供だ。吼え猛る風の音に怯えるのも年相応で可愛いじゃないか、と左近は目尻を下げる。
「よしよし、じゃ、こうしててやるからな。そうしたら、三成もゆっくり眠れるだろ？」
「ん・・・」
こっくりと頷くと、三成は安心しきった顔で左近の胸に躯を預けてきた。
「ほら、怖くない怖くない…」
髪を撫でていた手がやがてじりじりと首筋から肩へと這い降りてくる。抱き締めていた腕が、逃がす物かと言うように力を込めた。
「ん…やだ、さこん、くすぐったい」
大きな手が、いつの間にか三成の寝間着の袷から肌の内へと忍び込んでいた。愛撫になる前の愛撫に、三成は声を立てて笑った。
このまま、…イクか？
にやり。男が笑う。黒い瞳に、漸く情欲の火が灯されようとしていた。
「やだ、左近。くすぐったい、やめろってば」
笑いながら逃れようと身を捩る。けれど、男の手は容易に束縛を解こうとはしなかった。
思いの外に熱い掌に、三成が怪訝に思っていると。
「風が怖いんだろ？」
男は目を細めて笑った。
「…怖くなんかない」
拗ねたような口調で応えると、左近は大きな手で髪を撫でて言った。
「じゃあ、怖くならないおまじないをしてやろう」
「だから、怖くないって、んっ…！」
濃厚な口吸い。いつもと違うのは、逃げられないようにしっかりと頭を抑えられていることと、いつもより丹念に執拗に舌を絡ませてくるところだった。
「ふっ…う、ん・・・」
細身の腰を抱き寄せられ、そのまま寝間着の帯を解かれていた。
何だか分からないけど嫌で、抗議するように左近の厚い胸を拳で叩いた。けれど、抵抗は微弱なものにしかならず。
長い口づけから漸く解放されたと思う間もなく、少年の細い躯を男の手が這っていた。
「やだっ…左近、何をする・・・！」
怖くなって声を上げる。躯を這う手に、ある一つの意図が隠されていることが、朧気に三成にも分かった。無論、それが一体何を意味するのかまでは、流石に分からないのだが。
「俺がお前に怖いことをする訳はないだろう？直ぐに良くしてやるから、安心しな」
「何がっ…、何を・・・！」
太い武骨な指が、まだ幼い小さな胸の果実を掠め、摘み上げた。白い肌に薄紅く押された小さな花びらが、左近の目に鮮やかに映った。
「やだっ、そこ。くすぐったい…！」
「・・・逃がしゃしないさ…」
「あっ・・・！」
はだけた寝間着から見える肌は白い。滑らかで弾力があり、指先をはじき返して楽しませてくれる。
肌理の細かいその感触を楽しむように撫でていると、舌っ足らずに三成が抗議の声をあげる。
「やだ、もう…、左近…」
何をされるのか分からない恐怖だろうが、その中にある微かな媚びは天性の物だろう。意識していなくても、無意識に男を誘ってやまない。
いや、誘われていると思いたいのだ。既に充分左近は花の様な少年に惑わされていた。
あやすように髪を撫でてやりながら、左近は膝の上の少年を蹂躙する。武骨な指が隈無く三成の白い躯を暴いていく。
やがて、その指が三成の躯の中心に辿り着いた。
「やっ…！やだ、そんなところ…！」
本気で逃れようと骨細い躯が暴れる。滅茶苦茶に振り回す手が左近の頬を引っ掻いた。
「大人しく…っても無理か。あんまり暴れるなよ」
苦笑が漏れる。無体を働いている自覚はあるが、今更止める気もない。
暴れる腕を纏めて捕らえ、解いた帯で後ろ手に緩く縛った。
「左近、や、怖い…！」
吹き荒れる風は相変わらず激しく唸りを上げている。幾ら叫んでみても、悲鳴は人の耳に届きはしないだろう。風に感謝したい左近だった。
「良い子だ、三成」
厚い胸に少年の細身を抱けば、伝わって来る震え。
獰猛な肉食獣の素顔を優しい笑顔の裏に隠し、左近は三成の鳶色の瞳を見つめた。
「三成は、俺のことが好きだろう？」
「…好き、だけど…こんなことをする左近は嫌いだ！」
飾らない言葉。まだまだ幼い子に欲情する自分が、左近は可笑しかった。
「俺も三成が好きだから、こういう事をしたいのさ」
唇を合わせて舌を差し入れても、応えはない。頭を振って逃げようとするのが精一杯の抵抗。
まだ下生えさえも生え揃わぬ幼い性器に手を掛けると、一層激しく抗う。けれど、優しく撫でるように手を上下させると、ぴくりと一瞬だけ抵抗とは違う震えが走るのが感じられた。
「ひぅっ・・・！」
ずるりと皮を剥けば、剥き出しになる薄桃色の亀頭。感じたことのない感覚に、細い躯が竦み上がった。
「痛い…！左近、やっ・・・！」
切れの長い目尻に涙を溜め、怯えた獲物が残酷な猟師を見上げる。
「あぁ、ちょっと痛かったか」
それでも、いっそ慈愛に満ちたような笑顔は崩さぬまま、左近は三成の頬に額に唇に宥めるような口づけを降らす。
「もう、やめて…」
大人の力には到底逆らえぬと知りながら、三成は懇願する。それが、どれ程男の劣情を煽るかも知らずに。
構わず、左近は三成の頼りなげな性器を扱き上げた。
「やだっ！　やだぁっ・・・！」
身を捩り足を蹴り上げて暴れる三成を膝の上に押さえ付け、左近は薄紅色の小さな乳首に軽く歯を立てた。
そこで今更ながら気付く。その細い両腕を拘束していたことに。
ここまで来たのならば、最早逃れることはできないだろう。訳の分からない行為に不安を感じているなら、せめて縋り付かせてやったら落ち着くかもしれない。
そう思い腕の拘束を解いてやると、案の定三成は全身の力で左近の首にしがみついて来た。
ただ怖くて、逃れたくて、自分に非道を働いているその男にしか縋る道はなかったのだ。非道い男は、自分の大好きな男で。その二律背反を克服するのに、最早涙しか残されていない。
「左近、やだ、そこ触ったら…！」
「…そうだ、そうやって縋って落ち着いてりゃいい。怖くないから」
そう言いながらも、左近の手はゆるゆると少年の未成熟な性器を弄う。
何も分からないながらも、着実な愛撫の手にそれは今やひくひくと脈打っている。透明な先走りすら、左近の指先に感じられた。
「だって、そこ、熱い…変だ…」
ひっくひっくとしゃくり上げながら、たどたどしく言うのが可愛くて。
桜貝のように紅く染まった耳元で囁いてやる。
「男なら、誰だってこうなるもんさ」
三成の片手を捉えると、緩めた下帯の下に導いてやる。
「やっ・・・！」
自分のものとは圧倒的に違う、硬く脈打った男根の感触に、三成は慌てて手を引っ込めようとしたが、左近はそれを許さなかった。小さな手が己の物に触れていると思うだけで、それは益々いきり立つようだった。
「いいから、握っててくれ…」
「やだ、左近、何・・・、怖い…！」
獰猛なまでに猛々しい雄に怯え手を離そうとする。その華奢な手ごと左近は己を握り混んだ。そのまま即物的に上下に扱く。
「離して、左近・・・！」
「…こうやって動かすんだ」
先走りが三成の手を濡らした。ぐちぐちといやらしい水音に怯え、手の内に感じる熱と質量に怯え、そしてこんな訳の分からない行為を強いる左近に怯えて、三成の琥珀の瞳からは涙が止まらなかった。
「ほら、こうやって動かして」
技巧も何もあったものではない。ただ、三成の手が己の魔羅を扱いていると感じるだけで良かった。
「やだよぉ、さこぉん・・・」
びくびくと脈打つ物が気持ち悪いと、三成は泣いた。それすらも、興奮を高めるだけでしかないというのに。
「そうだ、もっと…。・・・ぅっ…！」
「あっ・・・・・・！」
左近の小さな呻きと共に、三成の手の中の物は大きく一瞬膨れあがり、次の瞬間には熱く粘ついたものが三成の細い躯にぶちまけられていた。
「やだっ…！何これ・・・！」
白い躯に点々と散った白濁の精は、猥褻で淫靡で、背徳的な迄に美しくいやらしかった。
子供を相手に何をやっているんだ、という大人としての左近の理性など、その姿を前にしては暴風に吹き散らされる木の葉のようなものだった。
獲物を前に獣がぺろりと舌なめずりする。狂暴な光を宿した目が、三成の琥珀色の瞳を見据えた。
「三成が欲しいから、こうなったんだ」
「おれ、が…？」
怯えた瞳の子供。男が何を言ってるのか俄には理解できない。
「だから、お前も良くしてやるよ」
半端に手を止めていたままだった三成のか細い性器を握ると、先程よりも強く扱き上げてやった。
「やぁ、んっ・・・！」
「ほら、悦くなってきただろ…？」
くちりと水音をさせながら、左近は三成の性器を扱く手を早めた。
「あっ・・・！やっ、だめっ…！左近、俺、変になっちゃう…！」
左近の首筋に顔を埋めて、三成は泣く。肩に熱い雫が降りかかった。
「ほら、素直に感じて」
「やっ…、あっ…だめ、…もう、だめぇっ・・！」
その瞬間、三成の細い躯がびくんと一際大きく震えた。左近の手の内で、幼い性器もぶるりと震え、とろりと蜜を吐き出した。
初めての射精だった。それはまだ薄く、さらりとさえしていた。
「何…？どうなったんだ、俺…？」
緩い痙攣を二、三度繰り返し、楽になった三成は茫然と左近の顔を見上げていた。
「可愛いな、三成」
満足そうに笑うと、左近は赤みを帯びた滑らかな頬に口づけた。
ああ、もう駄目だ。熱くなった頭の隅で左近は思った。少しずつ慣らしていこうと思っていたのに、こんなに可愛いとこのまま引き下がる事なんてできないじゃないか。一回ヌイただけじゃ、全然足りない。
性急に左近は手に受けた三成の精を己の魔羅に絡めた。
細い躯をひょいと抱き上げ、布団に寝かせる。状況の変化に戸惑う三成の瞳は、不安そうに揺れていた。
「力抜いてな…」
「ひぁっ・・・！」
濡れた指が、幼子の狭い秘所に突き入れられた。
「やっ…！やだ、左近、何をする・・・っ！」
暴れる両足を膝の下に押さえ付け、左近は暖かな内部に差し入れた指をばらばらに動かした。
「やっ、気持ち悪い…！そんなとこ…！」
「三成。…俺は、お前と一つになりたい」
「やだっ…、やだよ、左近…！」
幾度拒絶の言葉を口にしても、男は三成を蹂躙する事を止めてはくれなかった。まるで、左近が見知らぬ誰かに変わってしまったかのようだった。
差し込まれた指がずるりと抜かれ、三成がほっと息を吐いた次の瞬間、細い両足が胸に付く程深く折り曲げられ。
「ひ、あぁぁぁぁっ…！！」
天地が砕け散るかと思った程の、灼熱の衝撃。
隠す物も無く晒された狭い箇所が、無慈悲に突き立てられた雄に引き裂かれる。
「痛い！痛い、左近・・・！」
衝撃に一度仰け反った細い躯の持ち主は、思いもしなかった痛みと圧迫感と不快感に、半狂乱だった。
それでも、狭い扉をこじ開けて左近は腰を進めた。あらん限りの力で拒絶しようとする其処が、魔羅を引きちぎりそうに締め付ける。その痛みすら、自己満足の陶酔をもたらした。
「やだっ…！やだぁぁぁっ！」
暴れる躯を、左近は押し潰す程強く抱き締めた。
振り回されていた腕が、助けを求めるように左近の広い背に回される。どうあがいても、三成が助けを求められるのは左近しかいなかった。
「三成・・・」
「やだ…、左近…痛いよぉ・・・」
涙でぐしゃぐしゃになった琥珀の瞳。霞む視界にあるのは、ただ赤く染まった世界だけ。外を吹き荒れる風の音すら、今の三成には聞こえはしない。
「お前が、欲しいんだ・・・」
そんな言葉など何の免罪符にもなりはしない。ただ、欲望の儘に引き裂いておいて、今更何を言っているのか。
それでも、こんなに愛おしい。まだあどけないこんな子供に欲情して執着して。愚かの極みとも言える己の心が、左近は可笑しかった。けれど欲しい物は欲しいのだ。花が咲き誇る前に、その秘密を盗んでしまいたい。
「誰にも渡さない…」
睦言の様に甘く囁いても、三成の耳には届かない。
「左近が…苛める・・・」
しゃくり上げながら言う姿すら愛らしくて、左近は再び狂暴な欲に身を委ねた。
「いやあぁぁっ・・・！」
いきなり奥底まで突き上げられ、三成は激痛に意識を手放した。
「…気、失っちまったか…」
苦笑しながら、それでも左近は腰を緩く動かし続けていた。繋ぎたい、繋がっていたい。いっそのこと、武士になどならせず、このままずっと此処で可愛がってやりたい。
そうしたら、どれ程艶やかに咲くだろう。誰にも見せず、誰にも触れさせずに、愛おしみ慈しみ、愛してやりたい。
愚かな夢想に浸りながら、左近は気を失った華奢な躯を犯し続けた。

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「少年三成・初めて物語」完全版です。
やっぱり完遂しちまいましたよ、おっさん。
…如何でしたでしょうか？
言い訳はしません。
すいません、書いた当人だけが楽しかったです。