「狂宴」

ゆらりと立ち上がる細身の躯。乱れた白絹の夜着も、覗く素肌も幾人もの男の精にまみれている。
黒髪を揺らし、長身の男はゆらゆらと歩く。
周囲では、未だ醒めやらぬ狂った肉の快楽に惑う男達の姿。もつれ合い、絡み合う幾つもの嬌声。
或る者は彼の躯に溺れ、或る者は彼に愛でられ、燻り続ける狂乱の時に、狂い惑っている。その中心に位置する男は、この大陸に唯一人の皇帝である。
曹丕は、彼一人の為に設えられた寝所へと足を運ぶ。
狂った肉欲の宴に、唯一招かなかった男が、そこには居る筈なのだ。
放恣な欲望に身を任せるのは嫌いではない。初めは拒んでいた者も、やがてはその背徳の淫靡な欲望に堕ち、溺れる。それはそれで結構な事だ。
皆、堕ちてくれば良い。この深い淵の底まで。
だが、堕ちてきて欲しいと思いながら堕としたくない男が、居る。
あの様な情景を見たら、あの男は怒りと哀しみで憤死してしまうのではないかと思う。いや、彼の望むように、或いは堕ちるかもしれない。それも望むところではあるけれど、寧ろ引き上げて欲しいとさえ思う。この、どろどろと深い淫らな穢れの中から。
ふらふらと歩を運ぶ。
彼の為だけにある豪奢な寝台で、その男は眠っていた。
「起きよ、徐晃」
掛けた声は低いものではあったが、その男は跳ね起きた。
「陛下…！　申し訳ござらん。いつの間にか、拙者…」
「…違う」
「は…？」
慌てて起き上がり平伏しようとする男の頭上から、曹丕は短く言った。
「…何度言えば分かるのですか。・・・義兄上」
はっと気付いた徐晃は、狼狽えたように左右を無意味に見回していたが、やがて観念したようにぽつりと応えた。
「・・・・・子桓」
ふん、と鼻で笑い曹丕は満足したように牀に腰を下ろした。
分かっているのだろうか。あの日、あの時、義兄弟の契りを結ぼうと言われた時の嬉しさを。
至尊の位に就いた今でも、その想いは変わっていない。
それなのに、この堅苦しく生真面目な男は、皇帝となった曹丕に必要以上に狎れようとはしないのだ。
この私が許しているというのに。などと曹丕は決して口にはしない。
ただ、察しろ、と思うだけである。
唇を寄せれば、太い腕で力強くその身を抱き締め、舌を絡める。誰の物とも知れぬ精に汚れた躯を、丁寧に舐め清めていく。
嫌だとは思わないのだろうか。その様な後始末をさせられることや、曹丕が他の男に抱かれたり誰かを抱いたりしていることを、本当に嫌だと思ってはいないのか。
自分は、叱られたいとでも思っているのだろうか。それとも、嫉妬されたいとでも？
分からないまま、曹丕は徐晃の腕の中で悶え、叫ぶ。
泥のように疲れ切っていながら、最早この腕がなければ眠れなくなってしまったとは、何と不甲斐ないことだろう。
どれ程の乱交に身をやつしてみたところで、欲しているのはこの男だけで、それを認めたくないから、尚更無軌道なほどの肉の狂宴に酔う。
「子桓様…」
愛おしそうに彼を呼ぶ声は何処までも実直だった。
「徐晃…」
太く硬い楔に躯を裂かれながら、深く貪るように腰を揺らす。このまま遠く、どこまでも果てて行きたい。
つんと張りつめた乳首に舌を這わされると、痺れるような快感が全身を走る。
「子桓様…次は拙者もお連れ下され」
「何…？」
聞いたのは、思いがけない言葉。まさかこの男からその様な言葉を聞くとは思ってもいなかった。泣いて諫めるぐらいはするだろうと思っていたが。
「正気か？…私が何をしているか、お前は知っているのか？」
「無論、存じており申す。それ故に、お連れ下さいと申し上げております」
太い腕で曹丕の細身を抱き締めながら、熱い吐息と共にその耳に囁きかけてくる声は、少し掠れていた。
「…ふん、お前も他の男に興味が出てきたか」
「拙者がお慕い申すは子桓様のみ。…なれど、それが子桓様のお望みならば」
徐晃の目が曹丕の視線を捕らえた。濡れた蒼い瞳に己の姿が映っている。
「子桓様…拙者は、子桓様と同じ場所で同じ景色を見とうござる」
じんわりと曹丕の胸に得体の知れぬ暖かさが満ちてくる。
その言葉を、聞きたかった。
「其処がどこであれ、子桓様と共に在りますならば、其処が拙者の居場所でござる」
武骨な顔が、ひたすらに曹丕を見つめている。其処にあるのは、燃えるような思慕の想いだけだった。
「・・・来い、徐晃。私のところまで…堕ちて来るが良い」
白い腕が徐晃の逞しい躯を抱いた。
「何処へでも、お供仕ります。子桓様の、御為に」
肉欲の快楽の果てにあるのは、共に見る天上楽土か。
そうして、果てしもなく狂宴は続けられていく。愛し愛され、貪り貪られ。
荒廃した快楽の泥沼に人は沈み込み、惑溺し、そして、無上の歓喜の淵に堕ちる。

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皆様、訳の分からん小話ですみません。
ベースは三國志�[です^^;
いや〜、御曹司ハーレムですよ、美男子の！
歴史の方ですが、顔、性格などは無双で。
あんなちょぼいオヤジは認めん！
美男子集めまくって喜んでました（笑）
皇帝になって好き放題ですよ（笑）