日曜日。天気は上々。幸せな恋人達には、絶好のデート日和。
いつものように待ち合わせ場所に向かう。まだ、孫市の愛車は見えない。少し早すぎただろうか。長政はちらりと腕時計を見遣る。
早く逢いたいと想う気持ちが、長政を逸らせる。一分でも一秒でも早く逢いたくて。一緒にいられれば、こんな気持ちを味わうこともないのにと思うと、少し寂しくなった。
背後からクラクション。振り返れば、見慣れた孫市の車。
ぱっと一瞬華やかな笑顔を浮かべると、長政は車に乗り込む。
「悪ぃ、待たせちまったな」
「いえ、某も今来たところですから」
まったくお決まりの幸せな会話をする二人。街頭の時計を見れば、約束の時間まではまだ間があった。
静かに車は発進する。何も言わずに、孫市の左手が長政の手に重ねられた。
何気ないその動作が嬉しくて、長政も力を込めて握り返す。交わされる熱は幸せの証のようだった。
「そうだな…先に買い物済ませるかい？」
「あ、はい、そうですね」
どうせ正午を回ったばかりのこの時間では、どこに食事に行っても混み合って待たされるばかりだ。
高級デパートの地下駐車場に車を停め、目的のフロアへ向かう間も、孫市は長政の手を離さなかった。
ぱっと見て目立つ二人連れが、如何にも仲よさげに手を繋いで歩いているのは、人々の好奇の視線を誘った。
余りに注目されるのが恥ずかしくて、長政はせめて繋いだ手を隠そうと孫市にぴったりと寄り添う。けれど、その手を離そうとはしなかった。それは、孫市も同じである。
休日の雑踏の中、あれやこれやと長政の買い物に付き合う孫市。それは何処にでも見られる幸せなカップルの姿だった。
一通り買い物も済んだ頃には、昼食の時間帯も過ぎ、レストラン街は多少人も空いてきていた。
適当な店に入り、オーダーを済ませると、後は他愛もない社内の噂に関する雑談。
秀吉の浮気がバレて一悶着あったとか、総務の女の子が幸村に惚れているとか。
「そういや、左近さんがとうとう三成を拉致ったらしいぜ」
「えっ、石田課長を？」
長政は、切れ者で知られる経理課長と営業二課のエースの顔を脳裏に描いた。
大分前から噂になっていた二人だが、それにしても拉致とは人聞きの悪い。
「まぁな。三成はぽやぽやしてるからなぁ。あのオッサンも心配になったんだろうよ」
「ぽやぽやって…」
脳裏に描いた三成の顔は、至って傲慢そうにそっぽを向いている。あれ程辣腕厳格で知られた男に、その形容詞は相応しくないような気がした。
「そう思うだろ？けど、あれで結構自分のことは抜けてるらしいぜ」
けらけらと孫市は笑った。一回り以上も歳の離れた恋人が心配で、おろおろしている左近の事が可笑しくて堪らないようだ。嘗ての孫市に負けず劣らず浮き名を流していた男とは、とても思えない。
そう言う孫市も、今ではすっかり長政一途で、悪い噂はぱったりと途絶えてしまったが。
「でも・・・いいな」
ぽつりと長政は呟いた。拉致でも何でも、好きな人とずっと一緒にいられるようになった三成が、正直羨ましかった。
「…寂しいかい？」
こくんと頷けば、孫市の大きな手が優しく頭を撫でてくれた。
「ん…そりゃあな、俺だってそうさ」
「本当に？」
では、何故一緒に暮らそうと言ってくれないのかと言外に滲ませる。もしかすると、ただ都合良く遊びたいだけなのかもしれないなんて、後ろ向きな気分に捕らわれる。
そんな長政の気持ちを察したのだろう。孫市は少し困ったような微笑を浮かべて言った。
「夜とかさ、別れるときは凄く寂しいさ。けどなぁ」
ひょいと両手で頬を挟まれ、俯きがちだった顔を上げさせられる。長政の瞳を覗き込むように、孫市は言葉を続けた。
「次に会う時、長政はどんな格好をしてきてくれるかとか、早く逢いたくてわくわくするとか、俺はそんな気持ちも大事にしたいんだ。一度一緒になったら、そういうことって無くなるだろ？ 俺は、楽しい明日のことを考えたいんだよ」
「明日、ですか…」
「あぁ、明日の長政はきっと今日よりもっと綺麗だろうなってさ」
「そんな…」
ぽっと長政の頬が羞じらいの赤に染まる。如何にも前向きで、孫市らしい考え方だと思った。自分にはそんな考えは出来ないだろう。だからこそ、長政は孫市に強く惹かれるのだ。
それから、食事を済ませた後も、二人は他愛ない雑談を楽しんだ。
長政にとって嬉しかったことは、孫市がいずれ一緒に暮らす日のことを考えてくれていると知ったことだった。
「ん…そうだな、ちゃんとそれなりに準備したいしな。プロポーズはキチンとするからさ」
「え…プロポーズって…」
首筋から見る見る血の色が上ってくる。
勿論、今この国では同性の結婚は認められてはいないが、そんなものは飽くまでも本人達の気分の問題である。
「あぁ。待っててくれよ？」
「はい…」
そこだけ二人のバラ色の世界が展開されていた。
「さて…すっかり遅くなっちまったし、今日はそろそろ帰るか」
本当は映画でも観ようかという話だったのだが、今はこの二人だけの幸せな気分を壊したくない。
二人は最前のように手を取り合いながら出口へと向かう。
「おっと、そうだ。帰る前にちょっと…」
そう言って孫市が足を向けたのは生活用品売り場だった。
「何かお買い物ですか？」
「あぁ、さっきの話で思い出したんだけどな。三成に引越祝いでも贈ってやろうかと思ってさ」
言いながら、孫市は白いヒラヒラレースのエプロンを手に取った。
「新妻の必需品ったらコレだろ」
「でも…石田課長は家事はあまり・・・」
「いーんだって。楽しむのは左近さんなんだから。あとは…長政にも、な？」
「楽しむって？」
いーからいーから、と笑って孫市は会計を済ませる。ご丁寧に、二枚ともプレゼント用にラッピングまでしてもらっている。
「さて、じゃあ帰ろうか」
「はい」
孫市の愛車、黒の四駆に乗り込む。
デパートの外は、既に陽も傾きかけていた。茜色に染まった空は、今の二人に相応しい薔薇色にも見えた。
「じゃ、ちょっとドライブしてくか」
「某は…孫市殿が連れて行ってくれるなら、どこでも」
「可愛いなぁ、長政は」
元々下がり気味な目尻を更にだらしなく下げて、孫市はほにゃほにゃと笑った。それすらも、長政の目にはこの上なく優しそうな微笑みに見えるのだから、誠に恋は盲目である。
繁華な町中を抜け、海岸へ向かう。だが、長政の目はひたすら車を運転する孫市に向けられていた。運転している時の孫市の横顔は、いつもより精悍そうに見える。
そんな横顔にうっとりと見惚れる長政であった。
何処をどう走ったものか、車を停めたのは、車通りも少ない海岸線。いつの間にやら陽は落ち、闇が世界を支配していた。
「長政・・・」
エンジンを切った孫市が、力強い手で長政の肩を抱き寄せた。
「あ・・・」
促されるまま、長政も孫市の逞しい胸に縋り付いた。
髪を背を撫でる手は、暖かく優しい。その温度を感じるだけで、長政の胃の辺りがきゅっと締め付けられるように苦しく、熱くなる。
顔を上げ、孫市の瞳をじっと見つめてからそっと目を閉じると、間髪を入れずに唇が塞がれた。
初めは触れるだけ、けれどすぐに暖かな舌が長政の口腔に差し入れられる。舌を絡め吸い合う音が、はしたない程車内に満ちた。
「長政…好きだぜ…」
「某も・・・好き、です…」
背を這っていた孫市の手が、やがて尻から太腿へと回される。すんなりとしなやかな太腿を撫でる手は、布地越しでさえ熱く感じられ、その熱が長政にも伝染した。
スラックスを押し上げる昂ぶりが恥ずかしいのに、孫市の手がそれに触れて来た。
「あっ…駄目、です・・・」
キス一つで昂ぶってしまった自分の躯の浅ましさに、思わず拒否の声を上げてしまう。
「ここ…熱いな…」
「だって、そんな…嫌・・・」
真っ赤になった頬を隠すように孫市の胸に顔を埋めた。鼻先に漂うのは、精悍な男の匂い。
「もう、欲しいんだろ…？」
耳元で囁かれる声に、ぞくぞくと背筋を擽られる。それでも指摘は本当で、長政は小さくこくりと頷いた。
「でも、こんなになって…恥ずかしい・・・」
吐息に紛らせて言うと、孫市の小さな笑い声が聞こえた。
「俺も、一緒さ」
ひょいと手首を掴まれて導かれた先に、熱い塊。
「あっ…これ・・・熱い…」
「俺も、長政が欲しいからさ…」
愛おしい熱。長政を快楽の果てまで連れ去るそれを、長政はスラックスの上からそっと握った。
良かった、孫市も自分を求めてくれるのだ。自分だけが、この二人きりの空間に興奮を覚えている訳ではないのだ。そう思うと、長政は嬉しかった。
「なぁ…ちょっとだけ、口でしてくれよ…」
少し上擦った声で孫市が囁く。こんなに余裕のない声を聞くのは珍しい。
恥ずかしさを堪えながら、長政は自分の手で熱く脈打つそれを取り出した。
既に孫市のペニスは限界近くまで勃起している。運転席へと躯を乗り出し、ハンドルの下に上半身だけ沈めると、恐る恐る長政はその先端を口に含んだ。
「んっ・・・」
舌先から広がる独特の苦味を感じながら、ゆっくりと亀頭を口腔に納めていく。
「あぁ…いいぜ、長政」
孫市の手が、長政の黄金の髪を撫でた。
先端に舌を絡めながら顔を上下させる。根本を握り、時々強く吸い上げてやる度、長政の口の中で孫市のペニスがぴくりと跳ね上がる。
じゅるりと淫猥な音を立てながら懸命に舌を使っていると、髪を撫でていた孫市の手が、長政の頭を強く押さえ付けてきた。
「ん、ぐっ・・・」
「長政…俺、たまんねぇよ・・・」
孫市の腰が緩く突き上げるように動く。喉の奥まで入り込んだペニスの先端にえづきそうになるのを堪え、長政は根本を握った手を扱くように動かした。
「はぁ・・・いい、な…。長政、出すぜ…？」
己の拙い口戯でも、快楽を感じていてくれるのだと思った長政は孫市を銜えたまま頷いた。孫市が与えてくれるのなら、精液でも何でも喜んで受け入れるつもりだった。
「・・・っ？」
だが、次の瞬間、フェラチオに没頭していた長政は目を丸くした。
てっきり口の中に出されるのだと思っていたのに、いきなりエンジンが掛かり、車が発車してしまったのだ。
「えっ・・・？！」
慌てて顔を上げようとしたが、孫市の手がそれを許さなかった。
己の股間に長政の頭を押さえ付けたまま、ハンドルを切る。
「このまま、な・・・？」
忙しない吐息に答えるように、一度長政はきゅっと幹を吸い上げた。
口一杯に孫市を頬張りながら、長政はかつて無い興奮を感じていた。こんな事をしながら公道を走るなんて。何と無い背徳感に背筋がぞくぞくする。
それにしても、こんな状態で運転していて、危険はないのだろうか。
信号待ちで停車した時、長政は顔を僅かに上げ、ちろちろと幹に舌を這わせながら思い切り挑発するように、上目遣いで男を見上げた。
「長政・・・可愛すぎ…」
長政の唾液に濡れ光るペニスが、一層狂暴に猛り立つ。
「まご、いち…どの…」
愛しげに、長政はそれに頬擦りした。こんなに求めてくれるのが、嬉しかった。
男の亀頭に唇を寄せ、軽く啄んでやる。解放寸前に膨れた欲が跳ね上がった。
普段は運転の巧い孫市も、流石にこの状態ではいつもより荒っぽい。よしやこのまま、どこかに激突しても構わない。恍惚と長政はそんな事を考えた。
愛しい男と二人、こうやって快楽の最中に…。
心中を思わせる光景に、長政の欲もぞわりと震えた。死にたい訳ではない。ただ、快楽の果てにある絶頂はいつも死と隣り合わせだと思うと、それも悪くないような気がするのだ。
恥ずかしくてどうしようもないけれど、長政はこのドライブが何時までも終わらなければいいとさえ思った。
今なら、どんなことでも出来るような気がした。いっそのこと今すぐこの、熱く凶悪な猛りに引き裂いて欲しい。躯を押さえ付け、後ろから激しく突き上げて。
はっと躯に掛かる重圧に我に返ると、唐突に享楽のドライブは終わりを告げていた。
そこは、見慣れた孫市の駐車場。
「長政、おいで」
最前の己の所業に一人で動揺していると、適当に身繕いを済ませた孫市が手招きしていた。
慌てて手荷物を取って車から降りる。
強く肩を抱いた孫市の呼吸は荒い。心なしか歩き方もぎこちないようだ。
エレベーターの中でも、孫市は長政の細身をまさぐる手を止めない。躯の奥で燻っていた熱が、再び力を取り戻してくる。
動揺しているのは孫市も同じなのだろう。無駄に鍵をガチャガチャ言わせて、やっとドアを開ける。
導かれるまま玄関に躯を滑り込ませると、背後でロックの音。
暗い部屋の中で漸く二人きりになれた、と意識した瞬間、長政は背後から抱き締められていた。
「孫市殿・・・」
きつく抱き締めたまま、孫市は長政の首筋に顔を埋めた。
「長政…可愛い・・・」
首に掛かる孫市の吐息は火のように熱かった。腰に押し当てられる硬い感触も、同じ程熱い。
「あっ・・・！」
次の瞬間、長政は軽々と抱き上げられていた。反射的に孫市の首に手を回す。それは俗に言うお姫様抱っこというやつだったが、長政は気づきもしない。
いつもなら、躯に触れたり髪を撫でたり、好きだ何だと口にして、ムードを盛り上げるのが好きな孫市にしては珍しい。
抱き上げたと思う間もなく、寝室へのドアを蹴り開けベッドに長政を放り出す。
「ちょっ…、孫市殿…！」
今まで見たこともないくらい余裕のない孫市に、長政が慌てる。どんな時だって、手慣れた余裕を失わない男だと思っていたのに。初めての夜だって、優しくリードしてくれたというのに。
「長政…、好きだ・・・！」
服を脱ぐのももどかしそうに、孫市は長政の細身に覆い被さってきた。
逞しい腕が苦しい程に長政を抱き締める。
ようよう服を脱いだと思うと、孫市はもう性急に長政の足を開かせていた。
「長政、俺…もう我慢できねぇ…」
乱れた手つきで潤滑剤を塗りつけると、慣らすのもそこそこに、孫市は長政の躯を貫いていた。
「あぁんっ・・・！」
いきなりの重圧に長政の躯が軋み、悲鳴を上げる。それすら、長政には嬉しく思えた。
「孫市殿…もっと…！」
逃がさないと言うように、孫市の腕が長政の細身を胸に抱き込む。
長政の上で、ほっと溜息が聞こえた。
「悪ぃ…少し焦っちまった…」
ふるふると首を横に振る。偶にはこんな強引な程荒々しく求められるのも悪くはない。それに、長政だって早く男の楔が欲しかったのだ。
「長政、あんな事までしてくれて…、俺、すげえ嬉しかった…」
だから、早く繋がりたかった、離れたくなかったと、快楽に声を上擦らせながら孫市が囁いた。
「孫市殿…某も嬉しいです…こんなに求めてくれて…」
「ん・・・辛かったら言えよ…？ 俺、今夜は加減できそうにねぇから」
そう言いながら、孫市の腰は長政の最奥を強く穿ち、快楽を抉り出していた。
「ひぁ、んっ・・・！」
まだ慣らされていない体は、荒々しく突き上げられ悲鳴を上げる。
しかし、幾度と無く孫市を受け入れてきた其処は、やがてもたらされる動きに順応し、熱く柔らかく蠢いて孫市をひたひたと締め付け始める。
「すげ…いい、ぜ…長政・・・」
長政の細い腰を掴み、擦りつける様に揺さぶりながら孫市は快楽の一点を探る。
今にも暴発しそうな程滾った雁首が、その敏感な点を遂に捉えた。
「あぁっ・・・！ 孫様、いいっ…！」
弱い箇所を嬲られ、長政は堪えきれぬ高い嬌声を放つ。黄金の髪が乱れ、白い額に落ちかかる。
「長政っ・・・！」
愛してやまぬ人の嬌態に、孫市は尚強く腰を打ち付け、白い躯に忘れられぬ悦楽を刻み込んでいく。
それに応えるように、長政も身悶え、愛しい男の名を叫び続けた。
灼熱の快楽は、夜を薔薇色に染める。
一つになりながら、二人は互いを強く抱き締め、快楽の果てへと疾走して行った。
翌日。
「あ〜、太陽が黄色い」
ニヤケながら孫市は出社した。当然の如く長政も一緒に来ていたが、部長に呼ばれて先に人事部へ行ってしまっている。
孫市が足を向けたのは、領収書の請求の時にしか顔を出さない経理部であった。
案の定、始業にはまだ早いこの時刻、一人つくねんと机に向かっているのは経理課長の石田三成唯一人。
「よぅ、相変わらず早いねぇ」
「…何だ、貴様か。こんな時間から此処に来るとは珍しいな」
いつもと変わらぬ素っ気ない態度。これで年下なのだから恐れ入る。あのオッサンも何を好きこのんでこんな可愛げのないのを、と思ったが、其処が可愛いのだと手放しで惚気られた事を思いだした。
「やれやれ、そんな眉間に皺寄せてちゃ、恋人に逃げられるぜ？ 折角美人なのにな」
「要らぬ世話だ。俺は顔の事を言われるのは不快だと何度言わせる」
「へいへい」
ひょいと孫市は肩を竦めた。全く、愛想もこそもない。
「ま、いいや。三成ちゃん、引っ越したんだろ？ これ、引越祝い」
孫市は昨日デパートで買ってきたエプロンの包みを三成の目の前に差し出した。
「俺は好きで引っ越したわけでは・・・」
言いかけて、三成は諦めた様に一つ軽い溜息を吐いた。その軽い包みを手に取る。
「まぁいい。どういう風の吹き回しか知らんが、これはもらっておいてやる」
「そうそう。素直になってりゃ可愛いのにな、あんたも」
「・・・貴様に可愛いなどと思われたくない」
「…ホント、可愛くないのな」
その日はそれで終わったのである。
そしてまたその翌日のこと。
「おーおー、随分と昨夜はお楽しみだったみたいだねぇ、左近さんよ」
「…煩ぇぞ、オッサン」
「オッサンにオッサン呼ばわりされるほど、俺はオッサンじゃねぇ」
ニヤニヤと笑う孫市の前には、営業二課の島左近。至って上機嫌そうな孫市とは対照的に、こちらは苦味のある男前をぶすっと不機嫌そうに歪めている。
心なしか、その左の頬は赤く腫れているように見える。
「ったく、あんなもん贈ってくれやがって、エロオヤジが」
「何で〜？ 新妻ったらアレしかないだろ？ それとも、何かしたのかい？」
思惑通りに事が運んだらしい様子に、孫市は楽しそうに笑った。
「それにしたって、いきなり裸エプロンは無しだろ。これだから中年は」
「・・・・・・」
心底楽しそうに言う孫市に左近が反論しないのは、正にその通りだったからである。
「…アレは男の夢だ」
その「男の夢」を実現させようとした結果が、左近の頬の痕だったという訳だ。白いレースのエプロンは、営業部のエースの理性を吹き飛ばすに足る物だったらしい。
「まぁな〜。俺も、いつか長政にやってもらうんだ〜」
その為に買ったエプロン。孫市は、脳裏に白いエプロン姿の長政を思い描いた。金の髪を優しく輝かせて、想いの中の長政は綺麗に微笑んでいた。
「結局俺と同じじゃねぇかい。エロオヤジめ」
「だって、アレは男の永遠のロマンだぜ？」
「ふん。…次こそは、巧くやってやるさ」
「おたくも好きだねぇ」
「いぃえぇ、孫さんには叶いませんよ。アレを贈ってくれたあんたにはね」
「言ってろ」
営業一課と二課のエースは、何だかんだ言って、やはり気が合うようであった。
勿論、長政と三成が大人しく裸エプロンを拝ませてくれるかどうかは、神のみぞ知る秘事である。
〜終わり〜
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岩永さん、お待たせして申し訳ありません！＞＜
一万打記念リク、「孫長のエロ」で〜す^^
最初に贈った分ではちょっとエロが少なかったんで、
後日談と一緒に少々加筆してみましたけど…。
目を血走らせて半狂乱で書いた代物ですが、どうぞお受け取り下さい。
こんなバカっぽい話しか書けなくて申し訳ない！！
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