「本日も好いお日和」

朝、目覚めると鼻先を流れるのはコーヒーの良い香り。
ソルは気怠げに起き上がった。
窓からは爽やかな朝の光が射し込んでくる。
キッチンへ向かうと、テスタメントがいつものように朝食の支度をしている。
「あぁ、お早う、ソル」
「あぁ…」
どっかりと腰を下ろし、コーヒーをすする。
相変わらず絶品だ。
パパ、お早うなの〜。んにゃぁぁぁ〜ん。
ちびテスとテスにゃんが駆け寄ってくる。
平和な朝の風景。
「…ところで、ソル。前から聞きたいと思っていたんだが」
「何だ、改まって」
朝食も済み、ちびと猫は遊びに行ってしまった、二人だけのリビング。
「ソルは、どうして賞金稼ぎをしてるんだ？」
「あ？　何でって言われてもな…」
ソルはがりがりと頭を掻いた。
「いきなり、何だ？」
「ん…別に、大した事ではないけど」
賞金稼ぎは一攫千金。
ソルほどの腕ならば、一体狩っただけで数百万Ｗ＄は稼げるだろう。
勿論、テスタメントはソルの腕を信用していない訳ではない。
寧ろ、ソルを殺せる相手がいるのならば見てみたいとさえ思う。
しかし、それだけに賞金稼ぎなど、不定期な仕事である。
金さえ稼げば何ヶ月もここにいてくれる。
けれど、一度出ていったら次は何時戻るかまるで分からない。
それがテスタメントには淋しいのだった。
二十世紀、ブラックテック華やかなりし頃。
やれ携帯のパソコンのと、長距離でも連絡の取れる手段の豊富だった時代ならいざ知らず。
どうしたことかと気を揉んで待つのは、なかなか楽なことではない。
「何時か」終わる程の時を持たない身では、尚更のこと。
別に土日祝・年末年始休み、年次有給有りの職場を探せと言っている訳ではない。
今更、ソルにホワイトカラーになれと言っても無理だろう。
そんな贅沢は言わないが、もう少し、傍にいてくれる仕事なら良かったのに。
ソルを愛すれば愛する分、一緒にいたいと思うのが女（？）心というもの。
「そうは言ってもな…」
「…うぅん、いいんだ、分かっている。ソルにはやることがあるのだろう」
切ない笑みを浮かべて、テスタメントは頭を振った。
そっとソルの肩にもたれかかった。
「そう言えば、ソルとイノは知り合いだったな」
「あぁ、それがどうした？」
一瞬の甘い空気など忘れたようなジト目で、テスタメントはソルを睨んだ。
「…どういう関係？」
「は？」
ここ暫く仕事が忙しくて、昨夜帰って来たばかりのせいか、テスタメントは妙に情緒不安定だ。
訳の分からない質問ばかりしてくる。
「もしかして、モトカノ？」
「何だ、そりゃ」
怒ったような顔で、テスタメントはソルに詰め寄った。
「イノは胸も大きいし、色っぽいし、逞しい男が好きみたいだし、だから、ソルなんかぴったりでしょ」
「おい、待てよ。何で俺があんな露出癖のある色情狂みてぇなのと犯らなきゃいけねぇんだ」
「だって、ソルが素敵だから！」
怒られているのか褒められているのか、分からない。
「私なんか胸はないし、背も高いし、色っぽくもないし…」
そりゃあそうだ。両性具有と言ったところで、元は男なのだから、胸があったら大変だ。
「ばか、今の俺はお前だけだぜ」
「でも…」
しゅんと項垂れた恋人を、ソルは優しく抱き寄せた。
「信じろ」
「うん・・・」
ソルの腕がテスタメントを抱き締め、二人はそっと唇を重ねた。
そこへ。
コンコン。軽やかなノック音。
「お早う御座います、テスタメント。今日も良いお天気ですね。ということで、ソル、私と勝負しなさい！」
ガチャリと爽やかにドアを開けて入って来たのは、金髪碧眼の美青年。
「坊や、てめぇ…」
「あ、カイ、お早う
既にカイは封雷剣を構えている。
「俺とテスのまったりタイムを邪魔しやがって…」
剣呑な雰囲気を纏って、ソルは立ち上がった。
「やはり部下の報告は正しかったようだな。さあ、ソル！」
「…今日は生きて帰れると思うなよ」
限りなく、ソルは本気だった。
本気と書いてマジと読む。
「御茶の時間までには帰ってくるんだぞ」
二人を送り出すテスタメントの声が、余りにも平和であった。

〜Ｅｎｄ〜

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わ〜い、ほのぼのだ〜♪
と自分一人悦ぶ(笑)
何しろ平和が一番。
この二人の愛はいつも障碍に遭うのです(笑)
使い廻しで申し訳ない(^^;