あのね、父さんに会って、幸せだから心配しないでって言いたいの。
…ジジイにか。…まったく、お前はよ。
テスにゃんの赤い目が、じっとソルにゃんを見上げています。
・・・ダメ？
そう言われたら、ソルにゃんもダメとは言えませんでした。
チッ…しょうがねぇな。
ありがとう、ソル。
テスにゃんが、そっとソルにゃんの首筋に鼻を寄せました。
（私は、こんなに幸せだよ、父さん…）
心の中で、テスにゃんはそっと呟きました。
お天気のいい春の日、テスにゃんは久しぶりにお家に帰って来ました。
「ん？ …おぉ、テスタメントではないか！」
にゃぁぁぁん
「どこへ行っておったんじゃ。心配しておったんじゃぞ」
なぁう、なぅ〜〜〜
お父さんの腕の中で、テスにゃんは満足そうにごろごろと喉を鳴らしました。
何となくムッとしたソルにゃんは、その隙にさっさとお屋敷の中に入りこみます。
てってって、と奥へ進むと、カイねずみさんの匂いがしてきました。
あ！ ソル！ 戻ってきたのだな！
カイねずみさんはソルにゃんに向かってきました。
何故か、カイねずみさんはソルにゃんが気になるようなのです。
…手加減はしねぇぜ。
ちょっと機嫌の悪いソルにゃんは、低い声でそう言いました。
望むところだ。行くぞ。
勇ましいことを言ってもカイねずみさんはソルにゃんには敵わないのです。
それでも向かってくるのは、本当に何故なのでしょう。
今日もソルにゃんの勝ちです。
ソルにゃんはカイねずみさんを押さえつけて、前足でちょいちょいといたぶっています。
そこへ、お父さんにだっこされてテスにゃんが来ました。
あ…！
ぴょん、とお父さんの腕から飛び降りると、長い尻尾でソルにゃんの前足をはたきました。
ソルのばか！ 浮気者！
何だと…？
ソルにゃんはカイねずみさんを放しました。
てめえだって、ジジイに抱かれてほこほこ喜んでたじゃねぇか。
父さんは父さんだからいいの！
よくねぇっ！
フーッ！ ニャー、ニャー！
二人は掴み合いのケンカを始めてしまいました。
「これ！ テスタメントを虐めるでない」
お父さんはソルにゃんの首筋をひっつかんで、高い窓から放り出してしまいました。
ソル…！
「さ、これでもう大丈夫だぞ、テスタメントや」
お父さんがテスにゃんをだっこしようとすると、テスにゃんは部屋を飛び出していきました。
テスにゃんは走ります。
廊下を過ぎ、玄関を抜け、あの窓の下へ、いっしょうけんめいに。
ソルにゃんは丸くなって、毛繕いしていました。
大丈夫、ソル？ 痛いところない？
草ででも切ったのでしょうか、前足からちょっぴり血が滲んでいました。
平気だ。
ソルにゃんは傷を隠そうとして言いました。
血が出てるよ。
テスにゃんは心配そうに傷口を舐めてあげます。
おかしな気分でした。
ごめんね、ソル。帰りたいなんて言わなければよかった…。
…別に。お前のせいじゃねぇ。
ソルにゃんも、お返しにテスにゃんの耳の後ろを舐めてあげました。
…帰ろう、ソル。
テスにゃんの言葉に、ソルにゃんは黙って頷きました。
夕焼けの中、嬉しそうに寄り添って帰っていく二人の姿を、お父さんはじっと見つめていました。
「テスタメント……」
団長、泣かないで下さい。
お父さんの肩の上で、カイねずみさんが小さな声で鳴きました。
そしてそれから、二人はずっと森の中で幸せに暮らしました。
〜Ｅｎｄ〜
******
自分で書いておきながら、メチャクチャ可愛い〜〜〜！！！！とか思った。
オネエサン、芸風違いますぜ、てツッコミを入れつつ…（笑）
猫も此処に極まれりて感じですかねぇ。
でも、偶にはこういうほのぼのもいいよなぁ…。
今回、大受けだった挿し絵は、再び神谷様に頂きました(^^)
超ラブリーなイラスト、本当にありがとうございました〜♪
既に家宝ですワ。有り難く使わせて頂きます。
いやんいやん、超かわゆいですぅ〜〜〜(^^)
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