「めるへん」

ソルにゃんはテスにゃんが大好きです。
でも、テスにゃんは他に好きなものがあるようです。
どうしたらテスにゃんが好きになってくれるだろう。
贈り物をしたら好きになってくれるかもしれない。
ソルにゃんはいっしょうけんめい考えました。
鳥さんはどうかな。
ソルにゃんは自分の好きなものを思い出しました。
…テスにゃんは鳥さんと仲良しさんです。
テスにゃんの長い尻尾に止まって毛繕いしています。
カイねずみさんはどうかな。
ソルにゃんは自分を追いかけてくるなまいきなねずみさんを思いました。
…カイねずみさんはテスにゃんがお気に入りです。
ふかふかの毛皮で一緒にお昼寝しています。
う〜ん、困った。
ソルにゃんは考えます。
そうだ。
おたかなにしよう！
テスにゃんはおたかなが大好物です。

ソルにゃんは早速おたかな屋さんに走りました。
「コラーッ！　このどろぼう猫！」
大っきなおたかなを銜えて、ソルにゃんは走りました。
高い壁もへいちゃらです。
なぁう〜〜〜
窓の外でテスにゃんを呼びます。
テスにゃんは大きなお屋敷に飼われているのです。
なぅ〜
ひょい、とテスにゃんが顔を見せました。
黒い毛並みの美しいにゃんこです。
贈り物を持って来た。
ソルにゃんはそう言いました。
おたかなが見えたのでしょう。
テスにゃんは嬉しそうに傍に寄って来ました。
ありがとう、ソル。
ぺろ。
テスにゃんはそっとソルにゃんの頬っぺを舐めてくれました。
これからは毎日おたかなを盗ってこよう！
ソルにゃんはそう決心しました。
それからソルにゃんはテスにゃんに毎日おたかなを届けました。
毎日ありがとうなの。
二人で一緒に食べるおたかなはとっても美味しいです。
こんなに美味しいとは思ってもいなかったソルにゃんでした。
「コラ！　ウチのテスタメントに色気づくな！」
あ、父さん。
テスにゃんの飼い主であるオジイサンが向こうで怒鳴っています。
うるせぇ、ジジイ。
ガブ。
オジイサンの向こう脛に噛みついて、ソルにゃんは帰って行きました。
また来てね、ソル。
後ろから、テスにゃんの柔らかい鳴き声がそう言っていました。

そんなある日のこと。
付いてこい。
…どこに行くの？
いいから、付いて来いよ。
テスにゃんはソルにゃんに誘われるまま、お屋敷から外に出て行きました。
てってってって…。
歩いている間、ソルにゃんは口を利きません。
それにつられてテスにゃんも黙って歩きます。
壁を乗り越え、いくつものお家を過ぎ。
どんどんどんどん、お屋敷から離れて行きます。
ねぇ、ソル…。
不安になったテスにゃんが話しかけても答はありません。
でも、もうお屋敷はずっと遠くです。
テスにゃんが一人で帰ることができない、ずっと遠くです。
どうしよう、どうしよう。
テスにゃんは怖くなってきました。
ソル、置いて行かないで。
もうこうなったらソルにゃんに付いて行くしかありませんでした。
二人はいつしか大きな森に踏み込んでいました。
辿り着いたのは、一軒のお家です。
中に入ると、毛布やらおたかなやら、色々なものが揃えてありました。
…ここは？
…お前、何が好きだ？
テスにゃんの問いかけには答えずにソルにゃんが言います。
え？え？
…欲しい物があれば、何でも揃えてやる。だから、何が好きだ？
………何も要らない。
何だと？
…だって、私はソルが好きだもの。
テスにゃんのほっぺが赤くなっていました。
私は、…ソルが一番好きだから、ソルがいればいいの。
・・・。
テスにゃんの答えが意外だったのでしょう。
ソルにゃんは黙り込んでしまいました。
…じゃあ、ここにいるな？
テスにゃんはこっくんと頷きました。
じゃあいいや、乗っかっちゃえ、とソルにゃんは思いました。
なぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ぅぅ〜〜
森の中の一軒家に、テスにゃんの幸せそうな声が響きました。

〜終わり〜

…メルヘンでどうしてこういう落ちがつくのだらう…。
爆裂死でもしなければなりますまい。
ちなみに、挿し絵は神谷様に頂きました♪
メッチャラブリーなソルにゃんとテスにゃん♪
嬉しいですぅ〜〜。
どうもありがとうございました(^^)