古くさい机に上半身を突っ伏したまま、ボソッと呟くのが聞こえた。
「つまんない」
「何が」
「外。天気予報、嘘つきだ」
　部活が始まる頃、いきなり降り出した雨。
　確かに今日の予報は一日晴で、傘の必要なし。
　だが現実は、俺もダビデも全身ずぶ濡れで部室にいる。
　しかし、水も滴る…なんて言っている場合ではない。
「ふてくされてないで、拭け。風邪引くぞ」
　ロッカーからタオルを取って放ると、濡れた髪に丁度被さる。
「うぃ……」
　他のヤツらはまだ来てなかったから、帰宅してるだろう。
　着替えを済ませ、雨の降り続く外を見ていたら、ダビデが制服を引っ張ってきた。
「バネさん。髪、セットして」
　片手で髪を拭きながら、俺に整髪料を差し出してくる。
「仕方ねぇな。それじゃあ、先に着替えろ」
　頷きながら立ち上がり、モゾモゾと制服に着替え始める。
　甘やかし過ぎだ、ってサエには言われるけど。
　でも、こればっかりはしょうがない。
　サムいダジャレも、でかい躰も、まとめて好きになった。
「着替えた」
「よし、こっち来い」
　濡れてない方の椅子に座るように言うと、ダビデが俺の顔をジッと見た。
「ん、何だ？」
「バネさん、ありがと」
　何言い出すかと思ったら、抱きついてきて、いきなりのキス。
　………下手くそ。お前、ダジャレも下手だけどキスも下手だ。
「早くやって」
　それでも、真っ赤になってる顔を見られないよう俯く所は可愛い。
　…なんてのは、俺の欲目なんだろうな、やっぱり。
　何て考えていたら。
「雨の日の飴は甘ェ…ぷっ…」
「下らねぇっ！！」
　全く、どうしようもない放課後。