Act.４　カミイブ　

	ピピ…ピピ…ピピ… 午前１０時。起床時刻。 爽やかな電子音、完全無視。 何と言っても布団の誘惑には敵わない。 それから暫くして鳴り響いたのは、無粋な振動音。 あっさり無視。動く気にもならない。 あー、寒い寒い…。 何でこんな時間に目覚ましなんて掛けてあるんだろう。 そう思って気付いた。 「今日…でかけるんだっけ…」 待ち合わせ時刻は、とうの昔に過ぎている。 「あっ、深司、やっと起きた」 いる筈のない人物の、聞こえる訳のない声。 「…アキラ、何でいるの？」 ゆっくりと布団から顔を出すと、やっぱり思った通りの顔。 「だって、お前来ねぇからさ。迎え来たんだぜ」 得意げにニコニコしている。 「…何でさ。俺だったら時間に来なかったら、絶対帰るよ」 「だって、深司に会いたいからさ！」 満面の笑みだ。 待たされて怒るという思考はないのだろうか。 「ほんと、アキラって底抜けのお人好しだね…」 そう口では言ってみるものの、自分が寝坊した手前、 あまりいつもの調子でぼやくこともできない。 多少なりとも、伊武も悪いと思っているのだ。 「いいからさ、眠いならもっと寝ててもいいんだぜ」 「…それじゃ俺がバカみたいじゃん。いいよ、起きる」 もそもそと起き上がる。 よく見ると、神尾の頬や手は寒さのため赤く染まっていた。 「へへ〜、深司の寝顔見ちゃった♪」 少しだけムッとした。 だが、神尾が部屋に入ってきても気付かなかった自分の所為だ。 そんなに熟睡していたのだろうか。 「…いいよ、じゃあ、もっとイイ物あげる」 さっと抱き付くと、伊武は神尾の唇に自分のそれを重ねた。 「しっ、深司…！」 不意打ちのキスに慌てふためく神尾。 「…アキラの驚いた顔、変」 伊武は滅多に見せない笑顔を見せた。 「何だよ、深司〜」 結局、その日はどこにも出かけなかった二人だった。