いつも引き結ばれている唇。
褒めるより、叱る事の方が多い唇。
でも、それは貴方が本当に真摯な人だから。
何事に対しても、誠実な人だから。
だから、偶に笑っているのを見ると、胸がどきどきする。
甘いのかな、柔らかいのかな。
そんなこと考えて練習すると、決まって怒られる羽目になるけど。
陽も落ちて、一緒の帰り道。
胸が苦しくて。ずっとずっと我慢してきた言葉が。
「…キスさせて下さい」
言った後の後悔なんて、遅い。
だけど、言わないまま苦しむのも、もう嫌で。
怒られると思っていたのに、貴方は不思議な顔で俺を見ていた。
困ったような、照れたような表情。
「バーカ、百年早ぇんだよ」
そう言って、くるりと背中を向けた。
「あ…。お、怒らないで下さい…！」
慌てて俺はその背中に駆け寄った。
振り向いた貴方の腕が、いきなり俺の頭を抱き寄せる。
ふわりと掠めたのは、貴方の唇。
思っていたよりも、ずっとずっと柔らかくて、甘い。
「・・・今回だけだからな」
「宍戸さん・・・！」
抱き締めようとした俺の腕から、貴方はするりと抜け出した。
「ほら、帰るぜ」
得意げに笑う、貴方の笑顔がとても好きだ。
鮮やかな、余りにも鮮やかな、人。