「eureka」

「まだ気づかないのかい。
あいつはあんたにとってそんなもんだったのかい？
私ァ失望したよ、あんたにゃあ」

勝手な事をと思った。
考えようにも頭は執拗に同じ事を考える。
ただ浮かぶのは一つの顔だけ。
それ以外の何もありはしない。

…チガウ　ソウジャナイ…

胸のどこかでオレが叫んでいる。
思い出したい面影は別にある。
それなのに…。

「チクショウ…、ムカツクぜ」

誰かがオレの思考を占領してる。
オレじゃない誰かがオレの目を塞いでいる。
誰だ？
何故こんなことをしやがる。

「クレイドルだよ、思い出さないのかい？
あいつ、ここんとこ帰ってきてないってのに」

クレイドル………　　！

思い出した。
誰かの植え付けた想いを吹き飛ばして。
オレはあいつを思い出していた。

銀の月のように冷たい美貌。
孤独が好きで。
そのくせサビシガリヤでヤキモチ焼き。
それだけに一途で激しい想いを
オレにぶつけてきた。

何故、忘れていたのか。
決して離さない渡さないと誓ったのに。
空を翔けて、オレはリルダーナへ一気に飛んだ。

「…あれぇ、ナデューさん、もう来ちゃったんですか」
「リアム、テメエッ…！」
拗ねたように笑う小悪魔の顔。
その手の下にはオレのクレイドル。

「後でキッチリ話付けようじゃねェか」
こみ上げる怒りを抑えながら、オレはそう脅しつけた。
「酷いや、ナデューさん。
僕からクレイドルさんを取って行っちゃうんですね」

オレはリアムを無視し、意識のないクレイドルを抱き上げた。
ぐったりと腕の中で横たわる姿。
心なしか窶れた頬が青白い。
何をされていたかなど、敢えて問うまい。

喉に、腕に付けられた戒めの痕。
蛇のように絡みつく鎖。
胸の中でぞくりと悪魔の血が騒いだ。

「チクショウ、オマエはオレのモンだ…！」
叫び、意識のない唇を覆う。
冷たかった。
僅かに開いた歯列の間から舌を差し入れても反応はない。
それが、堪らなく悔しく。
…どうしようもないことに、羨ましかった。
生きていることは確認できている。
が、或いはこのまま目覚めなくてもいい、と…
どこかで思っていた。

バカな想いを振り払い、オレは急いでアンヌンへ戻った。

主の戻らなかった部屋。
冷たい寝台にクレイドルの体を横たえる。
衝撃で、細い眉が心持ち寄せられた。

…譬え、ナニをされていても、オマエはキレイだぜ。
オレは心の中で呟いた。
「だから、オマエは、オレのモノだ…」

渡さない。もう二度と。
誰にも触れさせたくない程。
そして、オマエに謝りたい。
あんな魔術なンかに引っかかったオレを。

愛している。
早く、目覚めてくれ。
オレのクレイドル…。

・・・我、失ワレタ魂ヲ見出セリ・・・

〜Ｅｎｄ〜

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やっと終わった。
「囚われ」の続きです。
やっぱり小説向きのネタだったんで、やや消化不良です。
とは言いながら、こういう話は好き。
性格の悪いリアムでごめんなさい。