「至上の愛を」

差し込む銀の月明かり。
意外にも貴方は明かりを嫌う。
私に抱かれるときには、明かりを消してくれとねだる。
その姿が可愛くて、嫌がる顔も可愛くて。私もつい意地悪をしたくなってしまうのです。
「やじゃ、柳生…！やっ…、あっ…！明かりは…！」
白い躯をくねらせ、どこまでも白い月光から隠れようと身悶える。
銀の光が銀の髪を照らし出し、闇の中、鮮やかに浮かび上がる。
貴方のように美しい人を、私は見た事がありませんでした。
「もっと、見せて…。貴方の美しい姿を」
「やじゃ、見んな…」
赤く上気した頬。それでも私を求める手が、私の腕を掴んで離さない。
「こんなに、綺麗なのに…」
額に唇を寄せる。
忙しい息を吐きながら、貴方は私に抱き付いてくれますね。
「・・・殺してやりたかよ…」
二人で一つの律動に身を委ねながら、貴方が私の耳に囁く。
「どうぞ。…構いません」
貴方の熱が直に伝わってくる。
「お前は…俺の総てを剥ぎ取る…。やけん、殺してやりたか…」
ぞくぞくする。それが、貴方の愛の言葉だから。
プライドの高い貴方は、私の前ですら己を晒したがらない。それでも、やがては羞じらいながら総てを見せてくれる。総てをさらけ出す直前の、危うい均衡に満ちた貴方は、何よりも光り輝いているのです。
「どうぞ殺して下さい。…貴方の、其の手で、私の胸を切り裂いて…」
歓びに躯が震える。私に愛を教えてくれた貴方の手で、私の総てを奪ってくれるならば。
欲情に潤んだ瞳が私を見上げる。
「…阿呆、そげん事ができるか」
「何故…？　貴方にならば、私は殺されても本望です…」
貴方が切り裂いた私のこの胸の傷口からは、止めどない貴方への愛が溢れ出すでしょう。
今や、私という器を満たしているのはこの愛だけ。
いっそのこと、自分でこの胸を切り開き、貴方への熱い想いを証してみせたいくらいです。
「・・・嬉しそうに言うな、変態」
「本当の事です」
この想いは鼓動が打つ度ごとに、私の胸に刻まれていく。
激しく、狂おしく、貴方だけを求め続けて、際限がないのです。
のたうつ躯。濡れた声。銀の光に縁取られた貴方は、月の化身。日毎夜毎に姿を変えて、私を眩惑する。
「愛しているのです、仁王くん…」
私の想いは貴方を満たす事ができますか？
「・・・けど、俺はお前のもんじゃなか…」
素直でない貴方の言葉。けして私の愛に狎れようとしない、貴方のその強さもとても愛おしい。
「分かっています…私の総てが、貴方のものなのですから…」
少し唇を吊り上げて、貴方は笑う。挑発的なその笑みが、とても好きです。自信に満ちた鋭い琥珀の瞳。
あぁ…このまま貴方の中へ溶けていってしまいたい。私の存在総てで、穢れなき貴方の魂を犯してあげたいのです。
「柳生・・・」
艶めいた声が私を呼ぶ。飽くなき愛欲の地獄へと誘う声が。
貴方と共になら、どこまでも堕ちていける。
「約束して下さい…貴方の手で、私の命を奪うと…」
「あぁ…約束じゃ…、お前は、俺が殺す…」
貴方の美しい手が、私の血で染まる…その光景を思うだけで、私の胸は強く貴方への愛を叫ぶ。
「愛しています、仁王くん」
これが、私達の愛の証。
「柳生…、俺も…！」
快楽の淵で叫ぶ貴方。乱れ狂うほどに、一層貴方は美しい。
私達は一つになり、夜の底へと堕ちる。

差し込む銀の光。
月光に包まれて眠る貴方。
美しい貴方が目覚めるまで、この腕に抱いていてあげましょう。
私の愛が、貴方に届くように。貴方の想いを感じられるように。
私だけに見せてくれた、貴方の愛の言葉を胸に。

オ　マ　エ　ヲ　コ　ロ　ス　ノ　ハ　オ　レ　ダ　・　・　・

〜Ｅｎｄ〜

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８２記念日フリー創作。修正版。
まぁ、殆ど手直しらしいことはしてませんが(笑)
多少言葉を付け加えた程度で。
こんな感じの日常を送っていて欲しいと思うのですよ。
兎に角、いつでもどこでも紳士は仁王を想う。
それはまた仁王も同様で。
いつまでもお幸せにね！
その割に殺伐としてるような…？？
いや、気のせい。ラブよ、ラブ(笑)