「声の魔力」
「ソル・・・」
寂しさに胸が潰れそう。
もう、何日会っていないのだろう。
離れている、今この時がとても寂しい。
いつの間に、こんなにも弱くなっていたのだろう。
ソルなしでは、もう生きていかれない。
そんな気さえしてくる。
私たちには、永遠にも等しい時間があって、その中でほんの数日離れているだけなのに。
私は膝を抱えてソファーの上に蹲った。
悲しみで、胸が張り裂けないように。
会いたい…ソル。早く帰って来て。
そうして、また幾日も過ぎた。
これで、一月以上も帰って来ない。
分かっている、不安になる理由なんて何もないのは。
それでも、寂しい…、寂しいよ、ソル・・・。
うたた寝に見る夢も、ソルの姿ばかり。
あぁ、もう。私ったら。
ふらふらとシャワールームに向かう。
少し気分転換にシャワーでも浴びてさっぱりして。そうしたら寝よう。
服を脱ぎ捨て、シャワーを浴びる。
肌の上を伝う水滴が、綺麗だと思う。
いつもなら、胸元と足の付け根にソルの付けたキスマークがあって…。
一人で確認して、幸せな気持ちになるのに。
もう、ずっと私の肌は綺麗なまま。
この体がソルに愛されていた証は、どこにも残っていない。
片手が脇腹を撫で、掠め過ぎる感覚に、どきりとする。
もう、何やってるんだろ、私。
あ…顔が勝手に赤くなっちゃう。
いけない、いけない。
濡れた髪を束ね上げ、脱衣所に戻る。…あ、着替え忘れた。
まぁいいか。誰かいる訳でもないし。
バスタオルを体に巻き付け、寝室へ向かう。
ガチャ。
「よぉ。…随分とイイ格好じゃねぇか？」
「ソ、ソル・・・？」
何で、ここにソルがいるの？
さっきまでは誰もいなかったのに。
急に、こんな格好をしている自分が恥ずかしくなった。
「何だ、待ちきれなかったのか？」
からかうような声が嬉しくて、そして切なくて。
「ちっ、違うよ…！ ちょっと、さっぱりしたかっただけだからねっ」
何をムキになっているんだろう、私。
でも・・・、ここにソルがいる。
そう思うだけで、体の芯が疼くような痺れるような感覚が沸き上がってくる。
「ま、いい。俺もシャワー浴びてくる。待ってろ」
ソルはそう言って、さっさとシャワールームに向かってしまった。
・・・ちょっと寂しい。
バスタオルを床に落とすと、裸で布団に潜り込んだ。
どうしよう、心臓がドキドキいってる。
自然と体を丸め、更に布団の奥に潜り込む。
こんなことって、今までなかったような気がするもの。
ドアの開く音。ベッドがぎしりと軋んだ。
もう上がったのか。早いなぁ…。
「テス…。おい、テス、出てこいよ」
そっと布団から顔を出す。
髪も解いて、裸のソルが目の前にいた。
「今帰ったぜ」
ゆっくりと顔が近づいてくる。
私は目を閉じて優しい口づけを待った。
私を抱き締める腕、吐息。ずっと、私が待っていたもの。
「お帰りなさい…」
何だか、嬉しくて頭がぼんやりする。
引き寄せられ、私はソルの膝の上に座っていた。
首に腕を回し、今度は私からキスをする。
舌を絡めると、激しく吸われて、ソルの大きな手が胸を撫でる。
「あっ・・・」
それだけで感じちゃうのって…変かなぁ。
耳元でソルのクスクス笑う声が聞こえる。
「そんなに待ってたのかよ、テス」
ソルの指が足の間に滑り込んでくる。
ぴちゃ、と濡れた音がした。
そんなに…濡れてたのか。頬に血が上ってくる。
「一人でしてたんだろ…？」
「し、してないよっ…！」
もう、ソルのバカ。そんなこと聞かなくても…分かってる筈なのに。
「ん〜？ したくならなかったのか？」
「…ならないもん。ソルのえっち」
どうしてそんな恥ずかしいこと聞くんだろう。ソルったら。
「一度もしたことねぇのか？」
「・・・ないよ」
そんな事を言いながらも、ソルの手はそこを優しく撫でている。
そんなことされたら…もっと欲しくなるのに。
「じゃぁ、俺が教えてやるぜ」
「えっ…？！」
背後からしっかりと抱き直され、私の足の間に自分の足を入れて、足を広げさせられる。
いや〜、この格好、恥ずかしい〜〜〜〜！！！
「ほら、…じたばたすんじゃねぇよ。
俺がいなくても寂しくねぇように、ちゃんと教えてやろうじゃねぇか」
「なっ…、何を言ってるの、そんな…」
耳元で低い声が囁く。
「じゃぁ、したことあるのか？」
「・・・知らないっ！」
ソルのばか〜〜〜。そんなこと、私の口から言える筈ないじゃない。
「だから、よ…先ずはここだ・・・」
ソルの手が私の手首を捉え、胸元に導いていく。
「あっ・・・！」
思わず、自分でも思っていなかった声が出た。
触ったのは確かに自分の指なのに、まるでソルに触られたみたいに感じた。
「そうだ、そこを優しく、な…」
手が、ソルの声に操られるみたいに動く。
指先で転がし、軽く摘むと、体中が痺れるみたい。
「ほら、お前、乳首好きだろ？ もっと丁寧に、だ」
「い、いや・・・」
ソルの舌が首筋を這う。
全身に火がついたみたいに熱くなる。
あぁ…自分で触ってる筈なのに・・・すごくいい。
「そうだ、そのままこっちの手を、な…」
空いていた片手を掴まれ、ゆるゆると下半身に持って行かれる。
「どうだ？ 硬くなって来ただろ？」
「いや…、ソル、ねぇ、赦して・・・」
これ以上、ソルの前でこんなことできない。それに・・・。
「何だよ、俺が親切に教えてやるって言ってんだぜ？ ほら、握れよ」
心は嫌だと思ってみても、体はもう待ちきれない。
うぅん、本当は嫌なんかじゃないのかも知れない…。
私の手はそっと自分の”男”を握っていた。
「あぁ・・・」
「イイ声だぜ、テス・・・」
意地悪な、ソル・・・。
そう口に出して言うと、笑いを含んだ声が低く耳に忍び込んできた。
「あぁ、そうだぜ…。もっと、お前の恥ずかしがる姿を見てぇな…」
「そ、そんな…、あぁ、いや…ソル・・・」
硬くなってきたそれを扱くと、叫びだしたいくらい苦しくなる。
だって、気持ちいいんだもの…。
いつもはこんなに感じないのに。
ダメ、もう我慢できない…。手が勝手に下がっていく。
「ったく…。悪い子だな、この手はよ。まだ、俺が教えてねぇってのに」
「だって・・・。少し予習しないと・・・」
そう言うと、クククッ…という喉の奥の軽い笑い声が聞こえた。
「そうか、勉強熱心じゃねぇか。…いいぜ、そうしたら、次はどうするんだ？」
「えっと・・・あの・・・」
片手で男性を握り、片手はゆっくりと女性の中に沈めていく。
そこは思った以上に熱くて…いつも以上に濡れていた。
「あ、んぅっ・・・こう、する…」
「そうだ。…でも、それだけじゃ足りねぇよなぁ？」
「あ、…あぁん、ソル………！」
硬くなった乳首を玩びながら、ソルは優しい声で言う。
「そうだろ？ いつもはもっと太いもんを入れてんだからな」
「あっ…ソルったら…いや、そんなこと言っちゃ・・・」
「テス…可愛いぜ」
頬にソルの唇が触れた。
抱き締める腕が熱い。それに…お尻に硬いモノが当たってる。
「ほら、もっと満足するようにしろよ。俺のと違って、お前の指は細いんだからよ」
誘われるように、指を入れていく。二本、三本・・・。
でも、もうこれ以上は入らないよ…。
それなのに、どうしていつもあんなに大きいのが入ってくるんだろう？
「動かせよ…どこが一番イイんだ？」
「あぅっ、ん・・・あぁっ、あ、いや・・・、ソル…」
手が動く。濡れた音が聞こえる。いやらしく、ぴちゃぴちゃ言って・・・。
「いいぜ。お前のソコも喜んでるじゃねぇか。…いい子だな、テス」
「あんっ、あ…う、ん・・・いい、ソル・・・。ねぇ、…もう…！」
どうしよう、どうしよう・・・。もう、止まらないよ・・・。
「もう…？ 何だ？」
「もう・・・苦しいよ。ソルが欲しくて…ねぇ…早く、私を引き裂いて・・・」
快楽の波がどうしようもなく苦しくて、自然に目尻に涙が浮かんできた。
「そんなに俺が欲しいのか…？ …泣くなよ、テス…」
舌先でそっと涙を拭い去ってくれる、優しいソル…。でも、意地悪なソル…。
「だって・・・待ってたんだもの…、ずっと…ソルのこと…」
そう、ずっと…離れてる間中、ずっとソルのことだけ思ってたんだもの…。
「あぁ・・・寂しい思いさせて、悪かったな…。俺だって、ずっとお前の傍にいてぇんだぜ？」
「うん・・・、分かってるの…だから、嬉しい…ソルのこと、大好きだから…」
何故だろう、涙が溢れてきた。
「俺もだ、テス…。お前のことが好きだぜ・・・」
「嬉しい…ありがとう、ソル…」
ソルの手が、まだ愛液に濡れている私の手を掴んだ。
「愛してる・・・。俺は、もうお前しか抱きたくねぇ…」
「ソル…！」
掴んだ手を引き寄せ、ソルはその手を口元に寄せた。
慌てて引こうとしても、ソルは離してくれなかった。
愛液に汚れた私の指を、ソルは丁寧に舐めてくれた。
ゆっくり、丹念に・・・。
「ソル、そんなもの舐めたらダメだってば…！」
指先からじんわりと這い上がる感覚…。背筋がぞくぞくする。
「何でだよ、いいじゃねぇか…」
わざと音を立てて舐めながら、ソルが悪戯っぽい顔で笑った。
「お前はいつも俺のを飲んでるじゃねぇか。…これであいこだろ？」
「もう…！ …今日のソル…優しいけど、意地悪」
そう言うと、ソルは強く私の体を抱き締めた。
「・・・お前に会えて嬉しいんだ…」
「え…？」
照れてるのかな。私の首筋に顔を埋めてしまったから、ソルの顔は見えなかった。
「・・いいか、入れるぜ…？」
「あ…うん・・・・」
もう、どうだっていい…。
今、ここにソルがいて、ソルを感じることができるんだもの…。
それから、私たちは夜が明けるまで愛し合った。
「ソル・・・今度はいつ出かけるの？」
「そうだな…十日ぐらいしたらな」
「うん・・・気を付けてね」
「あぁ、分かってる…」
「ソル………」
「ん？ 何だ・・・」
「ソルの声、大好き。もっと聞いていたいな…」
「…俺はお前が好きだぜ」
「嬉しい・・・」
何て、今が幸せなんだろう…。
ソルがいてくれる、それだけで。
ソル…私のソル・・・。
ずっと…ずっと、愛してる・・・。
〜Ｅｎｄ〜
