「魔の森の城」
あ〜、世の中ってのは、結構退屈なもんだぜ。
俺は世界中の賞金首を追って、宛のない旅を続けていた。
どいつもこいつも弱すぎて話にもなりゃしねぇ。
昔から王子の怪物退治の旅にゃ、怪物との死闘が付き物なんだがな。
ま、俺が強すぎるから仕方がねぇんだが。
誰だ、王子より魔王の方が似合うなんて言う奴ぁ。
クタバリてぇのか、あぁ？
そうはいっても、大した事件もなく、俺は漂泊の旅を続けるしかなかった。
取り敢えず、国に戻ればテスと結婚、か。
目標額を達成するまで、あとどの位狩ればいいか、考えながら歩き続ける。
目標ってのは、結納金のことだ。
てめぇの力で稼いで来い、でなければ息子はやらん、なんてクリフの奴が…。
ん？ あそこにいるのは、そのクリフのじじいか？
いずれ結婚する予定のテスの父親だ。
俺はそこへ足を向けた。
「む？ 貴様、何奴？」
…見たことのねぇ顔だな。新入りか。俺に向かって剣を抜くとはな。
「お主…こんなところにおったのか」
だが、そいつを制して、ジジイが声をかけてきた。
「そいつはこっちのせりふだぜ。引退したんじゃなかったのかよ」
クリフとは、過去にちょっとした因縁がある。
まぁ、別に悪い縁じゃねぇんだが。
それに、今後は義理とは言え、俺の父親に・・・う〜ん・・・。
「お前、団長の知り合いか？ ならば、止めてくれ。
団長はさらわれたご子息を救いに、魔の森へ行くなどとおっしゃっているんだ」
何？ 俺のテスがさらわれた？！
「えぇい、止めるな、カイよ。わしが行かずに誰が行く」
俺は主従漫才みたいなのを見ていた。
「おのれ、にっくきジャスティスめが。
こともあろうに、この一騎当千クリフ＝アンダーソンの息子をさらうなどという愚を犯しおって。
彼奴めに思い知らせてやるのじゃ」
「いけません、団長。どうかその議は我らにお任せください」
このジジイも言い出したら聞かねぇからな。
しかし、ジャスティスか…。あいつ、まだ生きてやがったとはな。
しかも、俺のテスをさらうとはいい度胸だ。
「頼む、お前、団長の代わりに行ってご子息を助け出してくれないか？」
「当たり前ぇだ。あいつは俺のもんなんだぜ」
話を聞いてみると、どうやら近隣の村に怪物が出るって噂を聞いて、
その討伐に行った帰りにさらわれたのだという。
しかも、ジャスティスの奴、俺のテスだけをさらって行ったとか。
…許しちゃおかねぇ。
「えぇい、カイ、このような男に頼まぬでも、このわしが…はぅっ！」
クリフの奴、また持病のギックリ腰で悶絶してやがる。
「テスタメントは・・・この父の手で・・・」
譫言みたいに呟くが、ま、暫く動けねぇだろうな。
「済まない、我らも後から行く」
「俺一人で十分だ」
俺はさっさと背を向けて歩き出した。
幾百のギアどもを薙ぎ倒し、焼き払って、俺は此処まできた。
魔の森の城、最上階。ジャスティスがいるだろう場所。
頑丈そうなドアを、俺は封炎剣で叩き壊した。
「ナンダ、貴様は・・・」
いやがったな。ジャスティス。相変わらず化け物じみた奴だぜ。
しかし、俺は今しも展開している光景に目を奪われた。
巨大な寝台の上に、仰向けに寝かされているのが俺のテス。
ジャスティスが手にしているのは、何かの手術道具。
咄嗟に俺が連想したのは、ＧＥＡＲ細胞のことだった。
まさか、こいつにもＧＥＡＲ細胞を…？
「背徳の炎よ、よくここまで来たな・・・」
ガラン、と怪しげな道具が床に散った。
テスは、全裸で眠っているようだった。
「…いい加減、死ね」
俺は封炎剣を構えた。
・・・・・・
戦いは長かったが、俺はジャスティスに何とか止めを指した。
これでこいつの「お友達欲しい病」の犠牲になる奴もいなくなるだろう。
ったく、こんなに凶悪なツラしてやがるくせに、友達が欲しいからって、
手当たり次第にＧＥＡＲ細胞を植え付けるのだけは勘弁してもらいたいもんだぜ。
外にいたギアの出来損ないどもは、みんなこいつの失敗作だ。
対象が人間に限るもんでもねぇから始末が悪い。
俺は、寝台に眠ったままのテスに歩み寄った。
そいつは、いとも安らかな表情で眠っていた。
白くて細い裸身を惜しげなく曝しながら。
まだ、ＧＥＡＲ細胞は植え付けられてねぇみてぇだな。やれやれだぜ。
眠れる森の何とかってヤツか。
…ただ起こすんじゃ芸がねぇよな。
俺はニヤリと笑った。
怪物との死闘の後は、こうでなきゃ嘘だぜ。
俺は手早く衣服を脱ぎ捨てると、寝台に乗った。
・・・なかなかスプリングの効いたいいベッドだな。
寝てる奴を犯るのは趣味じゃねぇから、一応起こしてみるか。
俺は唇を重ねた。
無抵抗な舌を絡め取り、吸い上げると、ぴくりと下の体が動いた。
「・・・ぅんっ・・・・」
なかなかいい反応じゃねぇか。
ついでに、滑らかな胸を撫で、薄い色の乳首を摘んだ。
「んっ…あ・・・きゃぁっ…！」
敏感だな、もう気がつきやがる。
無論、許嫁とは言え（強引に結婚を承諾させた）まだ食ったことはねぇ。
「だっ、誰だ？！ 近寄ったら舌噛み切って死んでやるっ！」
「おい…、落ち着けよ、テス。俺だ」
テスの奴、二、三度不思議そうに瞬きをしたと思ったら、いきなり抱きついてきやがった。
「ソル〜〜〜〜〜〜〜〜〜！！」
どうやら悪い夢を見ていたらしい。
いつも気丈なこいつらしくもなく、小娘のように啜り泣いている。
俺の顔がジャスティスに見えるたぁ、相当重症だな。
「毎日毎日、変な機械とか検査とかで体中触られて…。怖かった。
何をされるか分からなくて、とっても怖かった…。でも、逃げられなかった…」
しゃくりあげながら言う。
俺はその黒髪を撫でてやりながら聞いた。
「犯されなかったか？」
「・・・うん、多分…」
白い頬が真っ赤に染まってやがる。可愛いじゃねぇか。
俺はそのまま抱きしめて、押し倒した。
「じゃぁ、俺が確かめてやるぜ」
「えっ？ ちょっと、ソル…！」
唇を重ね、舌を絡める。最初はおずおずと、だが次第に積極的にテスも反応してくる。
白い首筋に歯を立て、太股をまさぐると、耐えきれないように俺の首に腕を回してきた。
「あ、ん・・・ソルゥ・・・」
甘い喘ぎが可愛い。本当に初めてなのか、とも思うが…。
取り敢えず俺の言うことに逆らう気はねぇみてぇだからいいか。
既にぷくりと充血した乳首をそっと銜えた。
「あぁんっ…！」
ぴくん、と細い体が跳ね上がった。そうか、ここが弱いのか。
じゃ、じっくり責めてやるか。
舌先でつつき、転がしてやると、体が小刻みにぶるぶると震えた。
声も立てられず、俺の肩に爪を立ててしがみついてきやがる。
もう片方の乳首を指で玩び、片手を股間に忍ばせた。
「あっ…！ ダメ、そこは…！」
嫌がる声も濡れている。可愛い奴。
・・・・・・。
俺は、一瞬ありうべからざる感触に動きが止まった。
・・・こいつは、男だったよな？
間違いない。水浴びしてる姿を覗き見したが、紛れもなく男だった。
だが、今テスのモノを掴んだ手は、その下に、無いはずの潤いを感じていた。
「・・・ソル？ どうした？」
急に動きを止めた俺を訝しく思ったか、心配そうな目で俺を見る。
…気のせいか、体も多少縮んでねぇか？
俺は体を起こすと、問答無用とばかりにテスの足を押し開いた。
「きゃぁぁぁぁっ！ なに…何をするっ」
俺は、珍しく呆然となった。
「ソル…？ あの・・・そんなところを…あまり見ないで…」
あんまりじっと凝視してたんで、恥ずかしそうにテスが言う。
俺は物も言わずにテスの片手を掴んで、自分の股間に触れさせた。
「あっ…。・・・・・・えっ…？ えぇっ？！」
すぐに異常事態に気付いたらしい。
体を起こすとそっとそこを覗き、確かめるようにゆっくりと触れている。
…さっきのあれだな。あの、妙な手術道具。
ということは、こいつもＧＥＡＲ細胞をやっぱり植え付けられちまったのか？
何の冗句か知らねぇが、ジャスティスの奴、妙な気を起こしやがったらしい。
つまり、男なのに穴が一つ増えたって訳だ。
しかも、さっきの感触だと・・・ちゃんと女として機能はしてるらしい。
「ど…どうしよう、どうしよう・・・」
おろおろと泣きそうな顔で俺を見るテスが、不意に無性に可愛くなった。
きつく抱き締めると、耳元で囁いてやる。
「いいじゃねぇか。俺がここにいるんだからよ…」
その後に、つい本音が。
「これで入れやすくなって、良かったじゃねぇか」
俺は、思いっきり拳で殴られていた。
「何だよ、殴ることねぇだろうが」
「・・・ばかっ！」
拗ねたようにそっぽを向いたが、何か落ち着かない様子で、ちらちらと俺を見ている。
「・・・ねぇ、ソル…」
「何だ、体が疼くのか？」
ま、確かにイイところで止めちまったしな。実は俺もそうだ。
顔どころか、全身真っ赤にして、こいつは頷いた。
ホントに素直で可愛い奴だぜ。
俺は、改めてテスを押し倒すと、足を広げさせた。
もう一度指先で確かめると、そこはさっきよりも濡れているようだった。
「あっ…、ソル、怖い・・・」
「怖くねぇ…力抜いてろ」
ゆっくりと指を沈める。
そこは生娘のように固く閉じていたが、少し動かすと息づくように動き始め、俺の指を銜えた。
普通の女よりゃ狭いが、何とかなりそうだな。
頬や唇に優しくキスを落としながら、俺はゆっくりと腰を沈めた。
目を閉じ、息を殺してその瞬間を待つテスが、堪らなく可愛い。
「んっ…あぁ・・・」
静かに腰を動かしながら、俺は硬くなった俺自身をテスの中に沈めていく。
ここで焦るのが、実は一番良くねぇんだよな。
飽くまでも優しく、だ。
壊れ物を扱うように、俺はテスの細い体を抱き締めた。
「ソル・・・あぁ、ソル・・・」
閉ざされていた瞼が、徐々に開いていく。
赤い宝玉のような瞳が俺を映していた。
「テス・・・お前は俺のもんだ・・・」
そうだ、もう誰にもこいつを渡しやしねぇ。
そして、俺達は快楽の海に溺れていった。
次に目覚めたとき、最早いつだか分からなくなっていた。
俺は何日ぐらい寝てたんだ？
物語なら、とっくに終わってる筈だがな。
「ねぇ、ソル。早く帰ろうよ」
俺の腕枕で寝ていたテスが甘えるように囁いた。
だが、俺はここである決心をしていた。
「嫌だ。もう帰らねぇ」
「なっ…！ 何を言い出すの？ もうジャスティスはいないのに」
「あぁ、だから好都合だぜ。邪魔者はいねぇ。
お前はここで俺とずっと一緒に暮らすんだ。…不満か？」
でも…とか渋るテスを、俺は説得にかかった。
もう、元通りの体じゃねぇってこと。
実質的に結婚しちまったんだから、どこにいても同じだってこと。
そして、最後は体で説得だ。
「…ここにいるな？」
「うん・・・」
恍惚と酔いしれているテスに囁くと、こいつはこっくりと頷いた。
これでいい。
これでもう、こいつはずっと俺のもんだ。
物語の終わりはいつだって「めでたし」で終わるもんなんだからな。
こうして、魔の森に新しい魔王が誕生した。
その傍らには、常に美しい恋人の姿があったという。
〜Ｅｎｄ〜
