「I will unmask that bogus ”gentleman”」
「あっ…！ やっ、柳生…！」
「声を出さないで」
そう言いながら、柳生の手は仁王の内部に埋め込まれている無慈悲な玩具を動かすのを止めない。そんな事をしたら、仁王が堪えきれなくなるのは承知の上だ。
「無理…言うな…っ」
仁王とて我慢しようとは思うのだが、餓えた躯は与えられる快楽に従順だった。
「もう…戻らんと・・・、なぁ…」
「駄目ですよ」
優しいはずの声は、熱を帯びていながら冷たい。
「貴方が、あんなことを言うから…」
あぁ、そう言えばそうだった。
仁王はぼんやりとその時の事を思い出していた。
二週間ほど前の事だ。
完全防音の柳生の部屋で、いつものように激しい情事を終え、放心したように横たわる仁王に、柳生が言った。
「貴方は、淫乱な人ですね。こんなに私を求めて」
仁王の裸身を見下ろしながらうっとりと呟く柳生の姿にカチンときて、つい仁王もムキになって言い返してしまう。
まるで、自分だけがいやらしいみたいではないか。それに、淫乱という言葉は、余り男性には使わない言葉だ。
そんなどうでもいいようなことが、気に障ったのかもしれない。
「お前さんが絶倫なだけっちゃろ」
「違いますよ」
「違わん」
それから違う違わないの口論になり、つい勢いに任せて口から出た一言。
「勝負じゃ」
いつも通りのじゃれ合いだった筈が、お互い虫の居所でも悪かったのだろう、そんな結果で。
どちらか一方だけが求めている訳ではないのはわかっている。互いに惹かれるからこそ躯を重ねるのだ。
だが、妙な意地を張って、どちらがより長く我慢できるかなんて、つまらない勝負。当然、自分で慰めるのも無しだ。
勝った方は負けた方を一日好きに出来るという約束までした。
それから二週間。
最初の一日二日は何ということもなく過ぎて行った。いずれ柳生が求めてくることは分かっている。あんな紳士面してはいるが、柳生は大層絶倫であり、且つ仁王の躯に溺れ、虜になっているのだ。
そうだ、自分一人が淫乱でいやらしいのではない、と仁王は自分に言い聞かせていた。
けれど、日が経つにつれて仁王は躯が切なく疼いてくるのを感じていた。まだ中学生であるし、仁王は自分の欲望には忠実であったので、我慢している事が尚更苦しくなってきたのだ。
処理するだけの相手なら男でも女でも構わなかった仁王だ。相手に不自由したことはない。
それなのに、欲しい相手が目の前にいても触れることすら叶わない。触れたら、恐らく終わりだ。歯止めも利かずに柳生を求めるだろう。
それが、こんなに苦しいだなんて、思ってもみなかった。
何気ない会話、部活が終わった後の汗の匂い、偶然触れ合う指先。そんな何もかもにぞくりとする欲情を感じ、慌てて頭を振る。それなのに、柳生ときたら全く涼しい顔で柳と話なんかしているのだ。
分が悪いことは分かっていた。柳生に言われるまでもない。確かに、自分は淫乱なのだろう。けれど、一度でいいから柳生に獣のように求めて欲しかったのだ。意地悪く、優しく愛されるだけではなく。
そして結局負けたのは−仁王だった。
今日の日曜日、柳生の部屋に二人きりになって、面白くもない勉強などを向かい合ってしているうちに、我慢が限界を超えてしまったのだ。
「柳生、俺の負けじゃ…！」
自棄になって叫ぶと、委細構わず柳生に抱きついた。貪るようにキスをして、押し倒すと腰の上に跨る。
「仁王くん…、私も、限界でした」
優しい瞳で仁王を見上げながら、柳生もそう呟いたことで仁王も救われた気がした。
そして、さあ、というところでチームメイトのブン太からの電話が空気を裂いた。
ヒマだからカラオケ行こうぜ、という脳天気なチームメイトの声に、何かを思いついたのだろうか、柳生がいやに嬉しそうな声で応じていた。
「何じゃー、柳生は俺とするより、ブンちゃんと遊び行く方が嬉しかとね」
折角のムードが流れてしまってむくれている仁王の額に優しくキスを落とし、柳生は言った。
「仁王くん、約束を覚えていますね？」
「約束…？」
にっこりと笑って柳生は頷いた。
「えぇ。勝った方は負けた方を一日好きにしていい、という約束でしたよね」
「・・・そうじゃったかのぅ」
しらばっくれてはみたが、無論仁王は覚えていた。こういうことに関しては、柳生は絶対に譲歩しない。忘れたと言っても無駄なのだ。
「お願いです。一日とは言いません、これからの半日、私の言うことを聞いて下さいね」
「え〜…」
これから出かけるのに、と思ったが、まぁ半日の辛抱だ。本当なら柳生にうんと我が儘を言ってやろうと思っていた仁王。実は柳生が何を言い出すのか、興味はあった。
いつも紳士的な態度を崩さない柳生のことだから、そんな突拍子もないようなことは言わないだろう。
「では仁王くん、向こうを向いて両手を床について腰を上げて下さい」
「・・・気が早いのぅ」
行く前に一度済ませてくれるものと思った仁王は素直に後ろを向いた。
「さぁ、服を脱いで」
シャツのボタンを外そうとした仁王に、柳生は更に優しい声で付け加えた。
「上はいいですから、下を」
「随分と即物的じゃの」
恥ずかしいと思いながら、仁王はズボンを下ろした。背後にいる柳生の目の前に秘部がさらけ出される。
「ふふ…可愛い人だ。少し待って下さいね」
ごそごそと音がして、柳生は何やら探している。
「あっ…！」
其処にひやりと冷たい感触。ワセリンだろうか。少しだけ、期待に胸が震えた。二週間、短いようで、何と長かったことか。
「いいですか、いきますよ」
「ひっ…！」
つぷり、と其処に侵入してきたのは、だが仁王の期待していたものではなかった。
柳生のものではない、指でもない。もっと固くて冷たいものだ。
「なっ…、柳生、何…！」
あっさりとそれは仁王の内部に侵入し、止まった。
「いい子ですね。それを入れたままお出かけしましょうね」
楽しそうに言いながら、柳生は仁王の服を元に戻してやっていた。
「やっ…、何？ やじゃ、こげなもん入れたまま動けるか…！」
「私のに比べれば些か小振りですが、いいでしょう？ ちゃんと抜けないようになっていますから、力を入れて、落ちないようにして下さいね」
「誰が…！」
抜こうと伸ばした手を捉えられる。柳生はその細い指先に唇を寄せて言った。
「駄目ですよ。約束ですからね。私の言う事を聞いて下さらないと」
「こんなんヤじゃ…！」
暴れる仁王を抑えつけて、柳生は仁王の唇を塞いだ。
情熱的なキスに、仁王の手足から力が抜けていく。
「ね？ 戻ったら、貴方の好きな事をしてあげますから」
「・・・色仕掛けかい。全く、お前さんのどこが紳士じゃ」
睨み付ける仁王に愛おしそうに頬擦りし、柳生は恋人の薄い躯を強く抱きしめた。
「私にこんな我慢をさせたんですからね。少しは楽しませて頂きますよ。頑張って皆を欺して下さいね、詐欺師殿」
「・・・変質者。変態紳士」
「結構」
そして、結局仁王は中途半端な感覚に焦らされるまま、カラオケへと向かったのだった。
「遅いぜー！ 何やってたんだよ」
「申し訳ありません、バスが混んでいまして」
涼しい顔で謝罪の言葉を口にする柳生とは対照的に、仁王は口も利けない有様だった。バスの振動など最悪だ。恐らく仁王の中に埋め込まれたものは、一センチ程度の突起が外に残るようになっているのだろう。其処を通して仁王の体内に振動が伝わってくる。ちょっとしたローターのようなものだ。
根本の辺りに雁首のようにくびれがあるようで、そう簡単に外れるようなことはないだろうが、異物感は拭えない。歩く度にそれが仁王の渇いた躯を刺激して、思わず隣を歩く柳生に縋り付いてしまいたくなったが、意地でも仁王は柳生の手は借りたくなかった。
何故、自分がこんな目に遭わなければならないのか。何故、この男はこんな碌でもないことを考えつくのか。
ただひたすら、仁王は柳生が恨めしかった。そこが好きと言えば好きなのだが、やはり、この変態性は考え物だ。
「どうした、雅治、顔色が悪いようだが？ 具合でも悪いのか？」
「いや、別に…」
言葉少なに答える。柳か、この男には気をつけなればいけない。参謀の眼力は、既に人の域を超えている。
「よっしゃー、行くかー！」
盛り上がり役はブン太と赤也だ。いつもならここに仁王も加わるのだが、今はとてもそれどころではない。
カラオケボックスに入ると、仁王は壁際にもたれ掛かった。傍に人ができるだけいない方がいい。その隣には密着するように柳生が座る。当然のようにインターフォンの近くにジャッカルが腰を下ろした。定位置だ。
初っ端からブン太と赤也がトバしている。何となく厳めしい顔の真田も、案外歌は嫌いではない。いつものことだ。
「どうしたんッスか〜、仁王先輩。いつものアレ歌って下さいよぉ」
「そうだぜ、もっと盛り上がれよな〜、仁王」
声をかけるな！と思うのだが、こんな事人に言える筈もなく、仁王はただ曖昧に笑って誤魔化した。
「それでは、仁王くんに変わって私が…」
柳生はマイクを取って立ち上がった。何故か歌うときに立ち上がるのは、柳生の癖だ。
「おー、渦かよ。やるねぇ」
「待ってましたー！」
そして朗々としたあの声で、柳生は目で犯さんばかりの勢いで仁王を見つめながら歌う。もはや仁王は壁際に追いつめられて、逃げようもなかった。
熱い眼差しで見つめながら愛の歌を歌う柳生は、とても情熱的に見えた。それどころか立ち位置の関係上、座っている仁王の目の前に柳生の腰がある。
熱い。躯が火照る。息苦しくて、喉が渇く。それは、満たされない躯の餓えか、それとも心か。
どちらとも判然とせぬまま、仁王は少し上気した頬に潤んだ瞳で柳生を、否、今となっては柳生の股間だけを見つめていた。
これでは餓えた団地の妻のようだ。男を銜え込むことしか考えていない。
だが、今仁王が最も求めているのはそれだけだった。満たされない器が切なく疼いて鎮めようがない。
傍から見たら、今の仁王は男とは思えぬ色香を発しているだろう。陶然と柳生を見上げる瞳の艶は、とても中学生とは思えない程だ。そんな顔で町を歩いたら、路地裏に連れ込まれて犯されても文句は言えない。
情熱的に歌い終わった柳生に拍手、歓声。反対に仁王は息も絶えなんばかりだった。
じゃあ次は俺、あ、ズルイっすよ、丸井先輩、などと言う無邪気な声が、仁王には遠い。ぐったりと壁に寄りかかっていた。
「どうした、先ほどから。具合でも悪いのか、雅治？」
「あっ…！」
柳が声を掛けた途端、仁王は小さな悲鳴を上げて、口元を押さえて机に突っ伏した。
「おや？ すみませんが仁王くんは具合が悪いようです。ちょっと失礼しても宜しいですか？」
その俯いた仁王の肩を抱くように柳生が立ち上がらせる。仁王の頬は熱でもあるように真っ赤で、心なしか足下も覚束無いようだった。
「おい、どうした、大丈夫か？無理すんなよ」
本当に心底から心配そうにジャッカルが声をかけるが、仁王は口元を押さえたまま、弱々しく首を横に振るだけだった。少し震えている。
「さ、仁王くん、大丈夫ですか。しっかりして下さい」
労るように柳生は仁王に肩を貸してやりながら部屋を出た。
そのまま二人は下手な歌が流れる通路を通り、トイレの個室にもつれ込んだ。狭い室内で密着する体。触れ合った箇所から流れ込んでくる熱は、どちらのものか。
「や、柳生…、きさん、何ばしよっと！」
柳生が歌い終わった途端、仁王の体内で異物が突然振動し始めたのだ。それは、今も仁王の中で不気味な振動を続けている。
「貴方があんな顔で私を見つめているものですから、可愛くて」
すました顔でリモコンのスイッチを入れた男は、仁王の細い体に腕を回して強く抱いた。その耳元で燃える吐息が忙しなく荒い呼吸を繰り返している。
「やっ…！もう、止め…！」
柳生が手を伸ばし、仁王に埋め込まれた異物に少しだけ触れた。
「あぁっ…！」
切ない声が上がり、仁王は柳生に縋り付いた。
「駄目ですよ、声は我慢して。…あぁ、もうこんなになって。いやらしい人ですね」
柳生が仁王の股間に触れながらそう言うと、仁王は熱に潤んだ恐ろしいくらい艶っぽい目で柳生を見つめ、冷笑した。華やかで、甘く冷たい笑みは、正に柳生が惹かれた笑顔だった。
「お前さんも、人の事言えんようじゃの」
仁王の手も、柳生の股間に当てられていた。そこは、布地越しでも分かるくらい、はっきりと熱を帯びて硬く盛り上がっていた。あぁ、やっぱりこいつも欲しかったんだ、と仁王は熱に占領されている頭の隅でぼんやりと思い安堵した。
「だって、貴方が余りにも可愛い顔をしているのですからね。それに、私だってずっと我慢していたんですから。罪な人だ」
柳生は服の上から強く仁王のそれを握った。片手を背後から回して、焦らすように仁王に埋められた無機物を前後に揺らす。
「はぁっ…！やっ…ん…、柳生・・・！」
噛み殺した喘ぎ。切なくて苦しげな声が、柳生を煽る。
「可愛い貴方がこんなモノに犯されていると思うだけで、私は…！」
その時、仁王の手の中で、それは益々熱と力を加えて跳ね上がった。
「誰、が…こげな真似…！」
柳生が無機物に嫉妬しているのは明らかだったが、焦らされるこっちの身にもなって欲しいと思う。苦しくて、体が別のモノになってしまいそうだ。こんな半端な感覚だけでない、確かな快楽が欲しい。爆発しそうだった。
「柳生…！早う、して…！俺、もう・・・！」
遂に堪えきれず、仁王は柳生の耳元で悲痛な声を上げた。
「何がしたいのですか、仁王くん？」
「何って…、…セックス…」
「誰と？」
「お前とに、決まっちょる…」
切れ切れにそう言う声は、欲情に震えていた。
「そうですか。それでは、部屋に戻って、皆さんにそう言って下さいね。…私とセックスをしたいから、もう帰るのだと」
「え・・・？」
柳生は笑っていた。心から楽しそうに。
「ね、いいでしょう？ 貴方がこんなにいやらしく恥ずかしい子なのだと、皆さんに教えてあげなくては」
「馬鹿、何ば言うと…！」
もうこれ以上付き合ってはいられない、と仁王は柳生の体を押しのけようとした。
「駄目ですよ。その前に…」
柳生の手が、仁王の手を己の股間に導いた。
「…確かに、紳士が前押っ立てて歩く訳にはいかんのぅ…」
本当はそんなことなどどうでもいい。どうせなら、今ここでその欲望の総てを自分に吐き出して欲しい。体を炙るような熱が振動を伴い、再び仁王の腰からじんじんと湧き上がってくる。
「な、ひろ…。口でしちゃるけぇ…な、これ、止めて」
火のような吐息を吐く唇を柳生の口元すれすれまで近づけ、仁王はこれでもかという甘い声で囁いた。琥珀の目は欲情に潤み、艶を帯びて濡れ光っていた。
「ふふ…そんな可愛い顔でおねだりですか。貴方は、本当にいやらしくて可愛らしい人だ…。そんな風に言われては断れませんね」
次の瞬間、仁王の体内の物は、無慈悲な振動を止めた。
待ちかねたように仁王は便器に腰を掛け、柳生の前を寛げると、熱く勃ち上がったペニスを取り出した。
一気に根本まで含もうとはせず、既に先走りに濡れる先端に音を立てて吸い付く。舌の先が激しく亀頭の割れ目を舐め回した。
ふっと大きく息を吐き出し、柳生は個室のドアに背を凭せ掛けた。気持ちが良かった。このまま直ぐに達してしまいそうだ。
薄汚れた天井に目を向け意識を逸らそうとする。そうでもしなければ、本当にこれだけでイってしまう。
途端、勢いよく根本まで含まれた。片手が柔らかく根本を握ったり離したりして心地よい刺激を与えてくる。
ずるずると吸い上げ、ぴちゃぴちゃと音を立てながら幹に舌を這わせる仁王の顔がとても淫らだった。恍惚として、輝くばかりに美しい。柳生はその顔がとても好きだった。
案外柔らかい銀の髪を指に絡ませる。
「あぁ…仁王くん・・・」
「ひろぉ・・・」
んくっ、と喉を鳴らしながら仁王の口戯は益々激しさを増していった。
もう駄目だ、と思ったその時。
がちゃり。
誰かが入って来た。
二人とも身動きもしなかった。息を潜める。それどころか、柳生は髪に指を絡ませたまま、更に強く仁王の頭を己の股間に押しつけた。
どうしたのだろうか。余りに長い間使用中になっているので、誰かが不審の念を抱いて覗きに来たのだろうか。
息詰まる一瞬。だが。
「柳生、そこにいるのだろう」
「柳、くん…ですか」
少しだけ驚いた。声は、上擦っていないだろうか。
抑えつけられた仁王は、顔を離そうともがいているが、柳生は押さえた手を緩めようとしなかった。
何もかも見通しているのだろう。柳の声は平静そのもので、何事もないかのようにドアの向こうにいるチームメイトに話しかけてくる。
「仁王もそこにいるのだろう。俺たちは二時間ほど延長することにしたが、お前たちはどうする？」
「そう、ですね…」
柳生は受け答えしながら、ゆっくりと腰を前後に動かし始めた。
鼻にかかった仁王の吐息は、恐らく柳の耳にも届いているだろう。仁王の手が、どうにか離れようと柳生の太腿を叩くが、柳生は一向に止めようとはしなかった。
「申し訳ありませんが…仁王くんの具合が優れないようでして、ね…。私たちはこれで帰ることにしましょうか」
「そうか。では、皆にはそう伝えておく」
限界が、見えた。仁王の必死さと、板一枚隔てたこんな場所で、という背徳感はいつもより尚更官能を高めている。柳生の昂ぶりが、一気に上り詰めた。瞼の裏が白熱する。
「えぇ、お願い、します…、…っ！」
「・・・盛り上がっているところを済まないな。…だが、柳生、程々にしておくことだ」
柳は気づいただろう。あの細い眉を顰めてため息をついている様子が、柳生にはありありと想像できた。
そして、静かに参謀は去った。
「あぁ・・・仁王くん…」
漸く髪から手を離した柳生の下で、仁王は盛大に咳き込んでいた。嚥下しきれなかった白濁が、ぽたぽたとその口から滴り、床に白い跡を残した。
あの瞬間、柳生のものはいつもよりぐぅっと太く熱くなり、仁王の口の奥に欲望の塊を吐き出していた。気持ちが悪い、息が詰まる。抑えられているから逃れることもできずに、窒息したくなければ飲み干すしかなかった。精液で窒息死なんて、冗談にもなりはしない。
「馬鹿！阿呆！変態！何さらすんじゃ！」
目の端に涙を溜め、仁王は柳生に食ってかかった。その濡れた口元がセクシーだ、と柳生は目を細めている。
「だって…貴方があんまり上手だから…」
「この・・・！」
本当に死ぬかと思ったのだ。怒りが一時快楽を上回る。
仁王は立ち上がると、勢いよく柳生の首筋に食いついた。文字通り柳生の肉を咬み千切らんばかりの勢いだ。
「いたっ…！ 痛いですよ、仁王くん…！」
「・・・ふん」
仁王が顔を離すと、柳生の白い首筋に一週間は消えそうにもない歯形と吸い跡がくっきりと残されていた。
「これは…」
「・・・隠すなよ？」
琥珀の瞳が、やや下の位置から柳生を睨み付けていた。
「そんな…。こんな目立つ場所に…」
仮にも紳士の異名を持つ柳生が、こんな盛大なキスマークを晒して歩いたら、一体どんな目で見られるだろう。制服のシャツでは隠れない位置だった。
「駄目じゃ」
幾ら今日は好きにしてもいいと言っても、これはあんまりだ。これくらいの報復はしてやらないと仁王の気が済まない。
「仕方がありませんね…。では家で、君も人前で着替えができないようにしてあげましょう、私の仁王くん。もう、辛抱できないでしょう？」
答えず、仁王は柳生に唇を寄せた。舌を絡ませる。酷く生臭く、苦かった。
「なぁ、自分の精液の味はどげんじゃ？」
「・・・最悪です」
本当に嫌そうに柳生は眉を寄せた。
「そげなモン人に飲ませたんじゃ、お前は」
「まったく、貴方は・・・」
苦笑しながら、柳生はお返しに仁王に埋め込んだローターのスイッチを入れた。
「あぁんっ…！」
予期せぬ振動に、仁王は飛び上がって柳生の体にしがみついた。遠のいていた欲情が、再び身内を熱く焦がす。
「さぁ、早く帰りましょう。…私も、我慢の限界です」
「うん・・・沢山、してな」
何でこんな奴が好きなのか、どこが好きなのか分からないと思いながら、それでもやっぱり仁王はこういう柳生が好きだった。
勿論、柳生の家に帰り着くまでがまた一苦労だったのは、言うまでもない。
〜Ｅｎｄ〜
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以上、表４００００hitの源様へ差し上げます！
す、すみません、お待たせしたのに期待を裏切ったら申し訳ない…！＞＜；
宜しければどうぞお持ち帰り下さい。
ちなみに仁王に入れたのは「飛びっ●４」がモデルです…て言うまでもない（笑）
一度やりたかったのよね〜、異物挿入で苛めるのって。
…その割に設定が活かされていないような…ゲフッ。
皆様が少しでも楽しんで頂けたら幸いです^^
良ければ感想などお願いします。
あ〜、エロ書いたの久しぶりだなぁ…。
ちなみにタイトルの和訳は
「あいつの紳士面した仮面を剥がしてやる！」
イギアの心の叫び（笑）ぴったりでしょ？（笑）